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姓名と血糊
「そういや姐御は名前何なんすか?
綺麗だし変わった服着ているし、
南のシンドかオスタンの王侯貴族の、
お姫様なんすか?」
シンドはヒンドゥーの語源で、
オスタンはオスマンか?
インドやトルコぽい国が有る様だな。
「私は大倉栄子、
南でなく東から…
日本て国かな…
そんなやんごとなき身分でなく、
成り上がり商人の娘よ」
「なんすかそれ!?
聞いた事無い国すね…」
そりゃあこのドハワールドとは、
次元レベルで違う異世界だからなあ…
「えーとオークラが個体名で、
人間のエイコ氏族なんすね」
「いや東では氏族名が先だから、
大倉氏族で栄子が個体名ね」
「栄子姐御なんすね!
でも俺の姐御は貴女のみだから、
姐御と呼びます!」
日本の氏名はどうしても、
覚えきれなかった様だ…
そして日本と言えば忘れかけたので、
刀の血糊を拭くために、
先ほどサワイがくれた革袋で、
刀身を拭う事にした。
あまり拭えないし不充分だろうが、
人間の脂は凄いらしいので、
拭かないよりはマシだろう。
懐紙など無いし、
ポケットティッシュは有るが、
血糊には足りなさそうだ。
こうして栄子姐御と舎弟サワイの、
人間退治の旅は始まった。