練習目標と基礎体力
すると先生は、
刀をゆっくり下ろした。
これこそ戯れているのかと思ったが、
私に正しい太刀筋を、
見せるのも有るのだろう…
先生の爪刀はゆっくり、
西洋兜のトサカに食い込み、
じわじわと刃が下ろされて来た。
どう考えても固い西洋兜が、
まるでチーズケーキの様に、
抵抗無く爪刃がめり込んでいく…
勢い付けて速く割るより、
ゆっくり徐々にのが難しいだろう…
そして前格子を越えて、
下まで爪刃が到達すると、
パカンと小気味良く割れて、
西洋兜の中身が開かれた。
裏地はクッション的な、
布や綿が入っていた。
「うぬはこれを目指せ。
いきなり割ろうとはせず、
先ずは切り込みを入れる事を、
目標とすべし」
私は早速三つ目の西洋兜を岩に乗せ、
人斬り丸を振り下ろした。
「でりゃあああぁあああぁ!」
しかし西洋兜は、
少し登頂が凹んだ程度で、
刃は立たなかった…
分厚そうなトサカ部分は、
避けたのに!
よく見たら西洋兜は、
革や紐で繋いで隙間有る、
日本兜と違って、
全部金属で遥かに頑丈そうだ。
これは普通の兜割りより、
難しいんじゃ…
異世界でドラゴニュートに教わっても、
特に補正無い私にはきつい…
ドハワールドの女剣士なら、
もっと斬り込んでいるんだろな…
しかし何度も西洋兜ガンガン叩く、
荒っぽい練習出来るのは、
ドワーフが作った凄い頑丈な、
人斬り丸ならではかも…
アダムワールド刀ならどんな名刀も、
刃零れや曲がる危険が有るだろう…
「稽古方法を覚えたなら、
うぬら山を廻って走れ!
基礎体力を付けるのだ」
「えー!?走るんすか!?」
ワイバーンのサワイにランニングは、
私よりずっとキツいだろうな…
「おら生き物じゃないから、
走っても成長せずに、
磨り減るだけだが…」
「うぬは妖力を操る鍛練になろう、
さあ早く!」
人間の体育教師は、
生徒を走らせつつ自分は自転車だが、
先生は一緒に走って追うので、
人間より誠意有るかも?
後ろから木刀振り回しながらは、
かなり恐いが…