治癒と金属片
「いやああぁああ!はぁああああ!!」
憎い人間の姿になってくれたおかげで、
私の木刀にも気合いが入り、
先ほど無言だった掛け声も、
自然と咆哮する様になった。
「それだ!その調子で打て!
隙だらけだがな」
「痛い!?」
なんと先生は受けるだけでなく、
反撃もして来た!
「治癒!」
しかし直後に治癒妖術で、
直ぐに痛みは無くなった。
「安心せい跡は残らぬ、
むしろ前より良くなる!」
前よりてどういう意味だろう?
肌艶とかだろうか?
「分からないけど、
とりゃあああぁああ!」
「甘い!」
「痛い!」
「治癒!」
こんなノリで打たれる度に、
即回復させられる流れを続けた。
体は回復しているものの、
精神は疲れてくる…
「よし大倉休め、
そして稽古内でも目標が要ろう…
兜割りせよ」
兜割り!?
柳生新陰流極意の!?
そんなの昔の武士も、
なかなか出来ない難しい事じゃ…
「手本を見せよう、
その南蛮兜をわしに向かって投げよ」
「えぇ!?」
「人の姿の今なら投げやすかろう…
早く!」
私は思い切って、
西洋兜を投げ付けると、
先生の前で無数の小さく四角い、
金属片に刻まれた。
「えぇ!?」
「太刀筋見えたか?」
やはりまた抜く瞬間、斬る瞬間は見えず、
鞘に納める場面しか見えない…
「あの今のは凄過ぎるので、
もう少しゆっくり…」
「そうだな…では…」
今度は西洋兜を適当な岩上に置く、
よく見る兜割りの体制になった。