栄子VS吸血鬼
目を覚ますと、
巨大怪獣でなく小怪獣のサワイが、
隣で寝ていた。
サキュバスが化けた三つ首竜、
あの特撮映画さながらの、
天を突く巨体は迫力素晴らしいし、
人間退治やエマ焼き討ちも、
楽だったろう…
あの巨体なら私が肩に乗り、
移動したのだろうか?
だが目の前の小さく、
私の肩に乗る場合も有る、
この一つ首竜が今愛おしい…
ゴートが最良で最善の仲間なら、
サワイは最初で最高の仲間なのだ。
「もう嫉妬しなくて良いよ…」
私はサワイの閉じた牙にキスし、
トイレに向かう事にした。
「私も葉っぱに慣れてきたなあ~
こればっかりはモンスターでなく、
自分の力でないと…
ゴートなら仮設トイレ的な、
アイテム持っているかな?」
私がゴート水筒で手を洗うと、
上空に羽ばたく様な音!
「ワイバーン使いの乙女よ!」
見上げると木の枝に、
黒マントで燕尾服の男が!
「吾が輩は吸血鬼真祖の、
ヴォイヴォダ!
貴様は血を吸われて眷属となれ!」
あーあ遂に来ちゃったよ…
強くて人気モンスターだけど、
人っぽ過ぎるから私にはイマイチな、
吸血鬼が…
サキュバスもだが何で、
似たような微妙なモンスターが、
立て続けに来るのか…
夜トイレ帰りの女を襲う、
マント男と言うと変質者過ぎるが、
吸血鬼だからプライド高い、
妙な自信有るんだな…
「乙女よ!貴様は人を滅ぼし、
怪物の世を作りたいのだろう?
我ら吸血鬼の力を借りれば、
可能なるぞ!」
「お断りします、
貴方は顔が好みじゃないから」
「何故だ!?吾が輩を目にした乙女はみな、
喜んで血を吸われるぞ!臆したか!?」
「いや私は人が嫌いだから、
人っぽ過ぎる貴方はちょっと…
まだ吸血鬼なら大きな蝙蝠か蚊か蚤のが、
吸われようかなと…」
「そんな異形の化け物が良いだと!?
むむむ…」
お、吸血鬼はサキュバスみたいに、
変身したり逃げたりしないのか…
まあ他の人間の女なら、
吸われたくなりそうなイケメンかもだが、
私基準ではブサメンだ…
面倒そうだから刀と鞘で、
十字架と…
「はっはっは!真祖の吾が輩に、
十字架なぞ聞かぬわ!
それは10級以下の下位吸血鬼のみぞ」
十字架は吸血鬼弱点の中では、
効かない事多い気がしたが、
階級が左右していたのか!
生前の信仰心による、
精神攻撃と思っていた…
「人間どもを血祭りに上げる、
貴様なら直ぐにでも、
2級位の上位吸血鬼になれようぞ!
ニンニクに耐えれる!」
それは元から耐えれるから要らない、
木の杭や銀の弾辺りは、
人間でも耐えれないけど…
「いや上位でも不老不死でも、
日光弱いのはちょっと…
人間は昼でも夜でも戦えますし…」
「安心せい!
励んで吾が輩と同じ1級の真祖になれば、
デイウォーカーで太陽克服可能だ!」
え?吸血鬼てそんな、
漢検みたいなシステムだったの?
真祖て一番古いて意味で、
大元ほど偉くて強いと思っていた。
「とにかく吸血鬼は、
仲間になってくれるならまだしも、
自分がなるのはお断りです、
今日はお引き取り下さい」
「むむむ…いずれまた会おうぞ!」
そう言うと吸血鬼も、
飛び去ってしまった。
すると遅れて、
サワイとゴートが駆け付けた。
「姐御~!大丈夫っすか!?」
「今かなり上位の、
吸血鬼の魔力を感じたんだな」
「大丈夫大丈夫、
大した事無かったわ。
そういや吸血鬼って、
ドラゴン関係有ると聞いたけど、
サワイの知り合い?」
「いや別に…
姐御も亜人全員知り合いじゃないでしょ?」
「確かに…」
すると別の羽ばたく様な音が!
「私は女吸血鬼のカーミラ!
今男吸血鬼から聞いたわ!
女同士仲良くしましょ!」
「だから!性別の問題でなく、
見た目の問題だと言ってんでしょ!」
こうして私は一夜で、
似たような人型モンスターを、
三体連続で追い返した。
私の生け贄嫌がるモンスターは、
こんな気持ちだったのかなあ?