翼竜舎弟
「頭を上げて…
私は使役とかで上下関係でなく、
貴方と対等な友達に…」
「いえ!俺は姐御の仁義に惚れやした!
モンスターを守る旅、
是非ともお供させておくんなせえ!」
怪獣映画と思いきやヤクザ映画、
ハイファンタジーと思いきやVシネマなノリになったな…
しかしワイバーンがか…
私はひとりっ子ゆえに、
上下左右の兄弟に憧れていて、
ワイバーンの弟が出来た訳か…
弟と言っても弟分や舎弟寄りだが…
「それに俺腹空いてますが、
とても姐御は喰えやせん!
新鮮な肉ならここに沢山有るっす!」
私が斬った冒険者の死体か…
確かに今斬ったなら生ている私と同じくらい、
新鮮な肉ではある…
私はB級モンスターパニック映画とかで、
モンスターが人間を喰う場面が好きだが、
実際に見るとなかなかグロテスクだ…
もしワイバーンが予定通り、
私ん喰っていたらやはり痛いだろうな、
大好きなモンスターの血肉になり、
一つになれるから、
グロくて痛くても恐くはないが…
するとワイバーンは、
何かの革袋を二つ私に投げ渡した。
「それが人間の餌すよね!?
姐御も補食どうぞ!」
革袋には干し肉と固いパンが入っていた…
ビーフジャーキーほど味は濃くなく、
パンも甘くなくボソボソしているが、
ワイバーンに渡された非日常感で、
美味い様な気がして来た…
もう一つの革袋は水でぬるいが、
口内が乾燥していたから助かった。
「ところで貴方、
被膜が穴だらけだけど大丈夫?
もう飛べないんじゃ?」
ワイバーンが飛行出来ないと、
さぞ辛かろう…
下手したら傷付いた野生動物の様に、
長くは生きられないんじゃ?
しかしそんな私の心配とは裏腹に、
ワイバーンはハツラツとした笑顔を見せた。
「飛ぶの嫌いだから良いんすよ!
それより俺が好きなのは、
地面に潜る事っす!」
「潜る!?」
「俺、サンドワームに憧れてんすよ♪」