栄子VSサキュバス
それからサワイはゴートのおかげで、
尻尾も戦いに活用する様になった。
「ギシャーッ!」
回転して顎や腕で攻撃しつつ、
かわされても尻尾で薙いだり、
毒針で敵を貫いたりと、
鞭と槍を兼ねた強力な武器となった。
(因みにサワイの毒針で死んだ冒険者は、
そのままより美味いらしい)
しかもサワイは私をよく見ている為か、
尻尾を振るのも縄跳びみたく、
タイミング合わせてくれるし、
武闘家や重武装戦士相手など、
力が要る場合は尻尾でも踏ん張り、
足の弱さをカバーしている。
食事時もゴートがちゅ~る的な、
ドラゴン用のおやつ食品をサワイに出し、
私が普通の味有る食べ物を食べても、
文句を言わなくなった。
睡眠はサワイが破れた羽根で、
私を覆うのは同じだが、
ゴートが出した敷き布団と枕で、
かなり快眠出来る様になった。
「ん?ここは!?」
そこは何もない白い空間、
ゴートのアイテムボックス内に、
物が無くなった様な、
作画が楽そうな背景だった。
すると蝙蝠の羽根を生やした、
露出度の高い女が現れた。
「初めまして大倉栄子ちゃん♪
ここは夢の中、
私はサキュバスよ♪
新魔王様の命で来たわ♥️」
なるほど夢魔か、
蝙蝠の羽根や頭の角は良いが、
それ以外は人間の女なのはなあ…
人間の男襲うには、
最適なんだろうけど…
「いや待って、
何で女の私に女夢魔のサキュバスが?
男夢魔のインキュバスじゃないの?」
「ふふふ…分かってるって~♥️」
「いやこっちは分からないから、
聞いてんだけど」
そんな同性愛者だの異性愛者だのLGBTQだの、
人間の物差しで私を測らないで欲しい、
私は怪物愛者だ!
「今から分かるわよ~♥️
貴女はどんな娘が好みかな~?」
すると頭の中を撫でられる様な感覚と、
それがサキュバスに吸い込まれる感覚…
こうして相手の好みを読み取り、
変身する生態なのか!
やはり触手かスライム?
ここなら誰にも止められないな…
ゴートの流れでメカ怪獣か?
人型モンスターは仲間としては認めるが、
流石に恋愛対象までは、
男女問わず無理だから、
そのままの姿だけは困るな…
するとサキュバスは光に包まれ、
風船の様に膨らみ、
見上げる様な大きさに…
徐々に形造ると、
目の前には高さだけで、
私の身長より太い鉤爪と逆関節…
見上げると羽根が破れた、
サワイに似た巨大ワイバーンなのだが、
首が三本も有り、
あのライバル宇宙怪獣さながらだった!
出現時に般若心経流れる、
BGM選曲まで良い!
「流石サキュバス…
想像より好みの姿に…
音楽まで凝るとは思わなかった…」
私は夢魔の実力を思い知ったが、
夢魔自身は自分の姿に驚いていた。
「ちょ!何これ!?
アジ・ダハーカ?ゴルィニシチェ!?
あんたどういう性癖してんのよ!?
こんな姿でどう交わるの!?
このでっかい体では貴女点じゃん!」
「いやそんな面倒な事しなくて良い、
一歩踏み出して私を踏み潰すか、
その大きな顎で一噛みしたら満足よ」
「貴女死んじゃうでしょ!
それ何が気持ち良いのよ!?」
「いいから早く!
仕事は早く終わって、
早く帰るに越した事無いでしょ!?」
「うぅ……無理ー!」
サキュバスは三つ首ワイバーン姿のまま、
上空に飛び去ってしまった!
「次は私の性癖満たす、
サキュバスよこして!」
「そんなの居ない!
いやあああああああぁあぁ!!」
文字通りあと一歩だったのに、
なんて情けない…
夢魔は負けたら気持ち良いらしいから、
勝った方が悔しくなるな…
新魔王の部下らしいけど、
魔族てこの程度なの?
口ほどにも無い…
そりゃ勇者に負けるわな…