ワイバーンの秘密
「…」
しかしサワイは、
今までしなかった冷めた目で、
私を見始めた。
「サワイ何なのその目は!?
嫌!見ないで!
そんな目で私を見ないで!」
「やっぱり俺の卵まずいっすよね?
金属のそのヒリヒリするやつかけたら、
姐御すっごく良い笑顔なりますもん」
私はサワイをゴートと、
平等に気遣っていたつもりだった。
冒険者肉も魔力が味に左右するか聞いたし、
ゴートの美味しそうな料理断り、
調味料だけ受け取って、
普段通りサワイ卵にした。
だが足りなかったのか!?
「金属何でも出来て、
めっちゃ器用ですもんね~
炎の温度だって俺より高いし、
穴も俺よりずっと広いし…」
炎の温度で嫉妬はワイバーンならではだが、
アイテムボックスを穴扱いし、
嫉妬はサワイならではだ。
「最初に俺でなく、
金属に出会っていたら、
冒険者狩りもエマ焼き討ちも、
楽だったんじゃないすかね?」
なるほどゴートの魔力を見て、
いじけているのか…
マスコット態でないのに可愛いやつめ!
いや可愛いがっている場合ではない、
サワイはかなりガチなのだ!
確かに最初にゴートなら異世界らしく、
どの冒険者にも無双出来たし、
風向き気にせずエマの街を滅ぼし、
アンデッド被害も無かった…
だがそもそもゴートが、
いきなり外に出ているだろうか?
最初にダンジョン行ったにしても、
サワイが居なければ私は、
ゴブリンか冒険者に、
早めにやられていただろう…
いや、こんな理屈では、
サワイは納得すまい…
私が逆の立場、逆の立場…
サワイの立場、サワイの立場…
サンドワームに憧れるワイバーンの時点で、
自分に置き換え難しいが、
言われたい言葉は…これだ!
「私の隣で一緒に前に出たり、
夜ずっと一緒に守ってくれるのは、
サワイだけでしょ?」
「そ、そうっすね…
へへへ…」
言動は男の子っぽいが、
そこは女の子なんだなあ…
ワイバーンを犬に、
置き換えて良いか分からないが、
長い尻尾を降り始めた…
尻尾?
「そう言えばワイバーンって、
尻尾先に毒針有るよね?
サワイ一度も使ってるとこ、
見た事無いんだけど?」
「あぁ毒針すか?
興味無いからすかね…」
自分の事だが興味無いと言えば、
私なら服装がそうであろうか?
他の女子はファッション誌を読み、
自分にどう合わせるか、
考える楽しみ有るが、
私の場合は考える前に、
私に合うらしい服を、
お母様やメイドが買って来て、
どうコーデするか考える間が無かった。
制服もまあ着れるから、
動けるから程度であり、
別にジャージでも体操服でも構わない。
毒針は蜂みたく、
飛行時の狩りには便利そうだが、
地面掘ったり目の前の冒険者には、
使い辛かったのだろうか?
「あ…でも毒針何回か、
姐御に当たった様な、
当たってない様な…」
「嘘!?体なんともないけど!?
尻尾の根元なら触れたけど…」
「指向性防御!」
するとゴートが、
サワイの尻尾に何か魔法をかけた。
「栄どん、サワどんの尻尾先触れてみて」
「てめえ今の話聞いてなかったのか!?
俺のは毒針なんだよ!」
「だから大丈夫はやく」
恐る恐るサワイの尻尾先に触れたが、
魔法陣で指が阻まれた。
「サワどんの毒針は、
栄どんにだけ刺さらない様にしたんだな、
他の人間には普通に刺さるんだな」
「やるじゃねえか…」
サワイがようやくゴートを認めた。