刀の真
私は刀を鞘ごと渡すと、
ドワーフ霊達は受け取った。
霊体でもポルターガイスト現象みたく、
物を掴む事だけは出来る様だ。
『これ…俺達が作った刀だ…』
『間違いねえ!鞘は俺が作った!』
『鍔は俺だ!模様頑張った!』
『柄は俺だ!
この訳わかんねえ編み方、
苦労したんだよな~』
なんと!私の刀は、
このドワーフ達がここで、
作った様だった!
予想外メイキング!
いやスタッフインタビューか!?
呼び止めたの異世界転移らしく、
「これSSSランクの名刀」
とかチートだと思っていた…
『サーベルなら何本も作ったが、
扶桑刀なんて初めてだったからな~
ドラゴニュートが持って来た、
見本の扶桑刀で見よう見まねで…』
軍刀ぽかったのはドワーフが、
どうやらサーベルと混同した様だった。
『姉ちゃん、あのドラゴニュートと知り合いか!?』
「いえ、全然分からないです…
その…刀は拾いましたし」
『拾った~!?
あのドラゴニュート!
捨てやがったか!許せねえ』
『俺らの刀受け取って、
不満そうに代金支払ったけどさ~』
「私は皆さんに一銭も払ってなくて、
本当に申し訳無いんですけど、
この刀には本当に感謝してます…
皆さんのこの刀が無かったら私、
このワイバーンを助けられずに、
素手で返り討ちになってました。
今ここにもこうして、
来れませんでした…」
きっと自著を古本屋で買われた、
著者みたいな心境かも…
いや拾ったからもっと酷いかも…
「えっ!あの時こいつらのおかげで、
俺は姉御に出会えたんすか!?」
サワイもドワーフ刀を巡る縁に、
驚いている。
『へっへっへ!気にする事はねえ』
『いけすかねえドラゴニュートに、
渋々使われるより、
姉ちゃんに使われて刀も幸せだぜ』
『可愛い顔に似合わず、
かなり血を吸わせているしな♪』
刀鍛冶ってだいたい、
自作品を人殺しの道具でなく、
美術品として扱われたい印象有る。
ドワーフ達はもっと分かりやすく、
本来の用途で使われて満足しているのか。
そして剣客は刃を見たら、
どれだけ斬ったか分かると聞いたが、
製作者ならなおの事か。
『この刃を窯に突っ込んだのは俺だが、
打って鍛えたのはゴートなんだぜ♪』
なんと!ゴートも直接関係するとは!
ハンマーみたいな脚と思ったら、
本当にそうだったのか!
通常の泥で出来たゴーレムでなく、
金属のゴーレムなのは、
ドワーフの鍛冶を手伝う為か!
何となくサワイに言った、
「ゴートは刀みたいなもの」は、
実は的を得ていたんだ!
「そういや、
この子は銘とか有るの?」
「いや無いんだな、
今は君の刀だから、
君が名付けたら茎に刻むんだな」
何にしよう…
刀は色んな格好良い名前有るな…
あの大人気鬼、呪い漫画、
はたまた整合性大冒険みたく、
シンプルに「栄子の刀」てのも良いが、
製作所に来て、
これだけ製作者集まっているなら、
特別な銘刻んでもらいたくなる…
やはりシンプルだが、
人類滅ぼすから「人斬り丸」かな?
敢えて格好良い刀に、
可愛い名前な「魔守りん」も考え、
合体して「人斬り丸魔守りん」だと、
特別な刀感出るな…
しかし「魔守りん」つまり「ままもりん」だと、
ママにトラウマ有る私には、
これ握る度にフラッシュバックしかねんな…
いや蝙蝠ヒーローが、
敢えてトラウマの蝙蝠に変身したみたく、
ママから受けた屈辱を忘れず、
アダムワールドに戻ればママ本人に使い、
自分は弱いモンスター達の良いママでいたい、
決意を込めて…
「人斬り丸魔守りん」で!
この子は普段は通称の人斬り丸、
魔守りんは忌み名て事にして、
ここぞの時に呼ぶ事にしよう…