救助
「女!なんて事しやがる!?
うおおぉおお!」
鎧の男のハルバートを持つ方が、
振り上げて気合いの雄叫びを上げた。
西洋甲冑は一見隙間無く見えるが、
動くためには隙間は有る…
振り上げて広げた左脇を斬り、
そこから心臓を突き刺す!
「がは!?」
剣技は密かに早朝公園で、
人を叩く練習として木刀素振りした程度で、
魔法使いの背中はまだしも、
甲冑の騎士を斬れるとは思ってなかった…
ハルバートを斧の様に振り上げず、
槍の様に突いて来てたら、
間合いで負けていた!
「お前!太刀筋は無茶苦茶な割に、
出来るやつだな…」
残る男は、
ロングソードを構えた。
切れ味ならこちらの刀が勝るだろうが、
製鉄技術が低い分質量でカバーしているので、
受けたり鍔迫り合いしたら負けるかも…
そもそも力で対抗出来るとは思えない…
まてよ受ける?そうだ!
私は鞘を引き抜いて、
ロングソード男に投げ付けた。
「うわっ!?」
鞘尻がサーベル状に、
補強されているので壊れなかったが、
男がロングソードで払った隙に、
私がロングソード男の首に刀を突き刺した!
「ぐはぁ!?」
訓練積んだ剣士なら絶対しない、
卑怯な手段ではあったが、
なんとか三人を倒してモンスターを守った!
「何だこの人間…」
ワイバーンは驚いて固まり、
私を見詰めている。
思い出フィギュアのワイバーンに似ている…
格好良いが羽根の皮膜が穴だらけで、
もう飛べないだろう…憐れだ…
襲い掛かる先ほどの冒険者三人こそ、
モンスターには普通の人間で、
突然現れ助けた私は、
かなり特殊な人間なのだろう。
しかしちょうどスーアクが、
着ぐるみ着た位の大きさで、
首や尻尾は操演で操作か?
いやスーアクが入るには細いし、
逆関節だからCGのが適しているか?
昔ながらのコマ撮りも良い!
何か摘まめそうな鋭い二本ずつの鍵爪は、
アップ時動くギニョールか?
いやいやこのワイバーンは、
特撮映画の作り物でなく、
生きた本物のモンスターなのだ。
「無事で良かった…
私は人間だけど他の人間から、
モンスターを守っている…
あ、お腹空いているなら、
私を食べて良いわよ。
乙女だから多分美味いと思う」
袖を捲って腕を突き出すも、
ワイバーンはまだ困惑している…
怪獣軍団や人類滅亡は贅沢過ぎる夢、
本物のモンスターを一体守れただけでも、
思い残す事は無い…
「お見逸れしました!
初対面の俺にその愛!その勇気!
姐御と呼ばせておくんなせえ!」
ワイバーンは平伏して、
私に忠誠を誓うつもりなのか!?