ドワーフの息子
殺人被害者と遺族が、
直接会話し易いのは異世界ならではだが、
これは正直賭けでもあった。
ゴートの懸念通りドワーフ霊達が、
怨念で責める性格なら、
初対面の私が仲裁する声を、
搔き消すのではないか?
サワイに威嚇させても、
既に死んでいるドワーフ霊は、
炎や鉤爪に怯まないだろう…
「降霊!」
さっきも思ったが、
相変わらずシンプルな呪文詠唱だ。
すると天井に白いモヤが集まり、
複数ドワーフ達の形となった。
「幽霊てこうなんすか、
ドワーフめっちゃ多いすね」
私も幽霊は初めて見るが、
サワイも初めてな様で、
率直過ぎる感想を述べた。
『あー!ようやく話せた!』
『つーかゴートおめえ奥手なのに、
こんな綺麗な娘連れ込むなんて、
やるじゃねえかwwww』
思ってたより気さくだな、
被害ドワーフ霊達も話したかったのか。
ゴートの悪夢に出たのは本人達でなく、
単にゴートの中での不安だった様だ。
「あの時みんなを守れなくて、
ごめんなさいなんだな!」
『何言ってんだ、
悪いのは全部俺たち殺した、
ドルゼに決まってんだろ!』
『俺らずっとお前が、
自分を責めて落ち込んでいるの、
心配して冥界にも行けなかったんだよな』
被害ドワーフ霊達、
思ってたよりゴーレムに優しいな、
部外者の私まで安心した。
地縛霊より守護霊に近いのか?
『まあその…気弱なおめえに、
ドルゼぶっ殺して仇討てなんて言わねえ』
『おめえが幸せになってくれりゃ、
俺たち幽霊ドワーフは満足よ』
「みんな…」
『その工房で俺らを弔うも良し、
上でゴブリンと騒ぐも良し、
その人間やワイバーンの娘達と、
外に出るのも良しだ』
『真面目なおめーはもっと、
好き勝手生きて良いんだ』
『ゴートおめえは俺たち全員の息子だ』
『おめえが最後のドワーフだ』
ドワーフ達はゴートを、
ゴーレムでなく同族の子と見ているのか、
ここまで愛されて作られたゴーレムは、
そうそう居ないかも知れない…
むしろ他のモンスター達も、
ゴートを愛するからこそ、
心配しているのだろう…
はみ出し者の私やサワイとは違う、
過去は悲劇過ぎるが羨ましい…
『あーやっと言いたい事、
全部言えたわ~』
『じゃ、そろそろ冥界行くわ~』
『達者でな~』
ドワーフ霊達は、
一仕事終えて解散する様な、
軽いノリで成仏する。
『ん?待てよ?』
『おい人間の姉ちゃん、
その刀見してみろ!』
昇天しかけたドワーフ霊達が、
地上に留まって急に、
私に話し掛けて来た。