苦労する守護モンスター
魔神を崇める祭は終わった。
悪役令嬢ならば、
きらびやかな王宮の中世舞踏会やるべきだが、
私はゴブリン王宮の古代儀式が性に合っていた。
「魔神様は聞いた事有るんすが、
なんだか強そうな見た目っすね…」
先ほど無言だったサワイは、
ゴブリンの祭に圧倒されていたが、
ワイバーンらしい強弱評価した。
サワイはサンドワーム最優先みたいだが、
どうやらモンスターにも宗教が有る様だ。
そしてようやく、
私は第五層のボスモンスターに、
会いに行く事となった。
しかしボスは何のモンスターだろうか?
やはりドラゴン?
いやドラゴンだと下位互換でいて、
嫉妬深いうちのワイバーンが、
更に面倒な反応をするかも知れない…
そう思いながら、
ゴブリンに連れられ下りると、
巨大な金属の扉の前に、
三体のモンスターが居た。
「ボス~その部屋換気出来ないから、
カビやコケ生えちゃいますよ~」
ガーゴイルは石の腕を、
ガンガン扉にぶつけている。
換気気にするのは初耳だが、
カビやコケ心配は動く石像ならではか?
「たまには太陽の光浴びましょうよ~
外で珍しい魔石見付けるかもすよ」
ケルベロスは三つの顎に、
それぞれ輝く魔石を咥えていて、
物臭な飼い主にボール遊び要求する、
飼い犬ぽくて可愛い。
てか尻尾が蛇は知っていたが、
人間に噛み付いて攻撃用と思いきや、
三つの犬頭塞がっている時に、
喋る様だったのか!
「いくら宝守りたいからって、
持ち腐れは良くないですよ~」
スプリガンは小さい妖精故に飛び回るが、
中性的イメージ有る妖精には珍しく、
筋骨隆々で兵士の可動フィギュアぽく、
小さな巨人と言う矛盾した形容がピッタリだった。
なるほど確かに、
引きこもり家庭の家族ぽい。
「あの…貴方たちは、
ボスモンスターじゃないんですか?」
「え?違うけどさあ…」
「ボス名乗って冒険者を、
手前で返り討ちしたりするよ」
「こう俺ら三体で、
シフト組んでランダムに出て、
本物のボスに近付けさせないな」
動く石像ガーゴイル、
地獄の番犬ケルベロス、
宝の守護妖精スプリガン…
なるほど三体とも拠点を守るモンスターで、
人間に攻め込むタイプではないな…
すると案内のゴブリンが、
大声で中のボスに呼び掛けようとする。
「ボスー!可愛い人間の女の子が、
ボスに会いたいらしいですよ」
『冒険者は恐いんだなー!
落とし穴放り込んどいてー!』
これがボスモンスターの声か、
人間をかなり警戒している様だな。
「それがこの人間の娘、
他の人間から我々を守ってくれましたよー!」
「人間だけど味方でーす!
名誉モンスターですよー!」
名誉○○と言う言い方に、
良い印象は無いのだが、
名誉モンスターは文字通り名誉と、
受け止めておくか。
歯車や仕掛けが作動したのか、
扉が解錠された音が鳴ったし。