生け贄の乙女
しかし私は他モンスター達に、
どう写っているのだろうか?
ゴブリンが浚ってきた、
ボスモンスターらしき王に捧げる、
生け贄の乙女だろうか?
そういや伝承に出てくる、
白羽の矢が立った生け贄の娘には、
憧れたな~
娘はだいたい、
生け贄に選ばれた事を嘆き悲しみ、
悲劇のヒロイン扱いされている…
だが私にはモンスターに命を捧げ、
血肉となる殉教は最高と思っている!
はっきり言って生け贄の乙女達は、
信仰心低い甘ちゃんであり、
正直サワイに喰われる冒険者達には、
嫉妬していたりもする…
英雄がモンスター退治して水差す、
余計なお節介伝説なるのは萎えるなあ~
いや、さっきヒーローになる危険有った盾青年は、
生け贄の乙女自ら退治しといたか…
そう思いながら進む三層目には、
これまた興味を惹かれる新モンスターが居た。
どのモンスターより、
乙女を襲うに特化したモンスター…
触手だ!
「良い!」
私も年頃ゆえ、
ネット等で大人の画像見たりし、
オークやゴブリンは人間よりはイケメンだが、
やはり一番は触手である。
「ちょっと姐御!
なに服脱ごうとしてんすか!?
交尾する気すか!?やめて下さい!」
「離してサワイ!
だって触手よ!?
絶対気持ち良いでしょ!」
ミノタウロスには無反応だったサワイも、
私を取り押さえようとする。
「やめろ馬鹿!」
「あいつは卵管刺して、
卵産み付けて苗床にするタイプだぞ!?」
「つまり触手赤ちゃんの餌にもなれる?
気に入った!」
サワイだけでなくゴブリンまで、
私を止めようとする…
「ほら触手おいで!
乙女の私が欲しくない!?」
しかし触手は青ざめ、
後退りしている。
「私、抵抗して泣き叫ぶ乙女が好きなんだニュル!
お前みたいにガッつく女は嫌いだニュル!」
「そんな!捕まえなくて良いなら、
楽でしょ!?」
「お前も肉は喰うニュル?
喰われたい家畜がお前の口に突っ込んだら、
喰えるかニュル!?」
確かに豚や牛が自ら、
口に突っ込んできて喰える人間は居ない…
鶏どころか白魚でもきつい…
私は今まで自分が喰われる事ばかりで、
喰う側のモンスターの気持ちを、
考えてなかったのか…
「じゃあ触手の横のスライムは?」
「!?」
「スライムにも駄目っす!」
「あいつは人間を飲み込んで、
溶かして喰うタイプだぞ!?」
「子どもの件は感謝しているが、
安易な自己犠牲は辞めろ!」
スライムも私に引き、
またサワイとゴブリンに取り押さえられ、
生け贄の乙女になる夢は絶たれた。