守りきる事
一方サワイも、
僧侶の水魔法を、
不利な筈の炎で押し返し、
水蒸気を上げながら迫る…
「グォオオオォオォオオォオォオ!」
間合いを詰めると腕羽根の鍵爪で、
サワイは僧侶を魔方陣ごと切り裂いた。
私たちの完勝だ!
視線を後ろに戻すと、
ゴブリンの子ども二人は逃げず、
まだ腰を抜かしていたが、
顔から恐怖は消えていた。
「大丈夫!?怪我は無い!?」
私はゴブリンに目線を合わす様に、
刀を置いて両膝を着いて、
出来る限り穏やかに語りかける。
「うん…」
「お姉ちゃんありがとう…」
「良かった…」
その言葉に、
私自身が救われた様な気がした。
「へへへ…」
するとサワイは、
両羽根の鉤爪を首の後ろで組み、
僧侶と盾青年を補食したばかりながら、
人間の後輩の様に微笑んだ。
「姐御は人間見る時の、
縄張り争いするオーガみたいな目も、
格好良くて好きすが、
守りきったモンスター見る時の、
母ちゃんみたいな目好きっす」
母か…カルト洗脳お母様のせいで、
私には最も苦しく、
最もおぞましく呪詛なのだが、
そんな私にも母性が有ったのか?
いつも他モンスターに嫉妬するサワイが、
コボルトの子どもも威嚇したサワイが、
ゴブリンの子どもには大人しい…
私と出会った時の自分を重ねたのか?
「あっ!でも新しいモンスター見る度に、
恋する乙女みたいな目はやめて下さい!
あの目で見て良いのは俺だけっす!」
いつものサワイに戻った、
その嫉妬その独占欲に安堵した。