モンスターの為に生き、モンスターの為に死す。
核戦争は直接的な、
爆風や放射能は勿論だが、
地球を氷河期にする、
核の冬が最大の脅威だ。
核シェルターに逃れた人々に、
最後の投降を呼び掛け、
妖怪変化する者は生かし、
逆らう者はその場で、
防寒装備した怪物の騎士団が、
その場で殺す。
アダムワールド新しいインフラは、
核の冬終えて春なってからだ。
アダムワールドの、
元人間難民キャンプに、
私は青い作業着で、
怪物の四天王と訪れると、
ラピスちゃん女王らケット・シーは、
炊き出しを行っていた。
「なにこの娘可愛いー!」
「女王なの!?」
「寒いからこれで、
しっかり温まってね♥️」
かつてお粥の為に、
娼婦になったラピスちゃんが、
雑炊を振る舞う様になるとは、
凄い進歩だ…
勇者や女神には、
暴力的な事を強いてしまったが、
これこそラピスちゃんに相応しい…
すると雑炊の列から離れた場所に、
小さな肉食恐竜の子どもが居た…
扶桑式妖怪変化でなく、
魔女式ガチャ魔法でか…
「きみ、どうしたの?
お母さんは?」
私が両膝付いて話し掛けると、
恐竜の子は泣き出した。
「わたしのおかあさんは、
だいまおうに…ころされました…」
その哀れな姿に、
勇者キョウとお母様が、
私への復讐の為に、
転生した様に思えた…
体から火薬の匂い…
爆弾を飲み込んでいる?
「うわー!」
恐竜の子は私でなく、
サワイに向かって走った。
恐竜の子は小さいながらも、
私たちをよく理解していた…
私に直接ならば、
ゴートや若本の防御結界が、
私を守っただろう…
だがサワイは…
「だめ!」
私も走って、
恐竜の子に覆い被さった。
サワイを守る様にも、
この子を守る様にも…
「姐御!?」
「栄子お姉ちゃん!?
死んじゃやだー!」
「自爆テロだか!?」
「この年齢では、
山姥の儀式懐柔出来なかったか!?」
身体中が熱くて痛いが、
私はなんとか最後の別れを…
「人に産まれ人を呪い…
それでもあなた達に祝われて良かった…」
「何言ってんすか!?
姐御は誰よりモンスターでしたよ」
ありがとうサワイ…
貴女はいつも欲しい言葉をくれる…
「治癒魔法が追い付かないだ!
でも栄どんをアンデッドにしたくないだ!」
ゴートごめん…
繊細な貴方に残酷な事ばかりさせて…
「今までよく頑張った…栄子」
あぁ先生…最後は下の名前で、
労ってくれるんだ…
二つの人類を滅ぼし、
三つの世界を滅ぼし、
勇者や女神まで滅ぼし、
二度とモンスターが経験値や英雄譚の、
犠牲にならない世界を創れた…
モンスターの為に生き、
モンスターの為に死ねた…
悔いの無い…
楽しい生涯だった。
ー終わりー