久々の帰宅
アダムワールドには、
中ボスの勇者やラスボスの女神どころか、
異世界の誰より弱いが、
誰より厄介で、
誰より斬らねばならぬ、
裏ボスが居るのだ…
「大倉くん!?」
アパートへの坂道に、
あの国語教師も見掛けたが、
若本が出した人斬り丸で、
私は袈裟斬りにした。
胸がスッとしたが、
一番斬りたかった相手ではない。
「お嬢様!?」
若本でない方の元メイド、
お母様をカルト勧誘した養老は、
私服で見掛けたが、
人斬り丸で首を跳ねた。
そうして我が家アパートに、
到着した…
アダムワールド内では、
数分くらいの様だが、
私目線では凄い久しぶりだ。
若本もいつの間にか、
ドライバー作業着から、
見慣れたメイド服に戻っている。
「てか若本、
将来的には婚約者が一番厄介だけど、
何でお母様も殺しといてくれなかったの?
私お父様より、
お母様のが嫌いなんだけど…」
「私が奥様も殺めたら、
お嬢様はドハワールドに満足し、
こうしてアダムワールドに戻る、
モチベーションを無くすでしょう?」
なるほど…確かに私は、
お母様への耐え難い憎しみで、
ここに戻って来た。
勇者の様に毒父に、
社会的呪縛も可哀想だったが、
毒母から産まれた、
生物学的呪縛は、
世の中がどう変わっても、
拭い難い事実なのだ。
若本も女神と言う、
究極の毒母が居たから、
その辺り分かっている!
罪に問われるアダムワールド社会では、
我慢か別居の二択だが、
私はドハワールド征服を経て、
これからアダムワールド新社会を作るから、
思い切れる…
他人はギリギリセーフでも、
親を殺したらアウト扱いされ、
刑務所でもいじめられたり、
地獄行きとも言われるが、
若本があの世である、
ギャレワールド司る今では、
そんな心配は無いのだ。
まだ私のものでない世界は、
このアダムワールドだけ!
家の鍵はスマートロックで、
Suicaを当てて開ける…
これ登録引っ越しで、
何より苦労したなあ~
「ただいま~」
静かだがお母様、
寝ているのか?
うるさい独り言や奇声よりは、
ずっと助かる…
「お邪魔します…
この新居に上がるのは、
初めてです」
「俺は何もかも、
初めてしか無いっす!」
若本は初めてでも、
当たり前の様に上がり、
サワイは入り口を壊しながら上がる。
借家だがもう、
私の家でないし、
世界越えて別居したから、
良いかあ…
どのみち全て壊すし…
「お母様~殺しに帰りました~」
居ない…怖じ気づいた?
いやお母様にそこまで、
知性有ったかな?
久しぶりに自室で寛ぎたいが、
今はそれどころではない…
「姐御…もしかして、
上に居るあのババアが、
母ちゃんなんすか?」
サワイは首を外に伸ばして、
半分室内に居ながらも、
上を見ている。
「二階!?気付かなかった」
二階に上がるとそこには、
喪服を着て真上玄関ドアを叩く、
お母様が居た。