盾
「馬鹿な!君だって人間じゃないか…」
「人間だからこそ、
人間の醜さ恐ろしさ知ってるわ…」
「そいつらゴブリンは、
村を襲って略奪する害獣だぞ!?」
「今ダンジョンを襲っている、
貴方たち人間こそ駆除すべき害獣!」
「ええい!会話が成り立たん!
PKなら先に君を討伐する!」
「サワイ今!」
サワイはここぞとばかりに、
ブレスを二人に吐きかける!
しかし青年は盾、
僧侶は結界でこれを防いだ。
ダンジョンに来るだけあって、
他の冒険者より準備が良い…
畳み掛ける様に、
私は青年に斬りかかる。
だが再び盾に防がれた。
「甘い!」
「きゃっ!?」
私はそのまま、
青年の盾越し体当たりに吹き飛び、
思わず尻餅を付いた。
「きみ威勢良くて面白いけど、
ぶっちゃけ弱いよね?
いや女の子だからとかでなく、
他の女剣士の娘らのが、
もっと力有るよ?」
「くっ!」
やはり異世界の女剣士の中でも、
私は非力な方なのか…
「それにさあ~何で剣だけなの?
せめて安物でも装備揃えなよ?
盾強いでしょ?」
確かにそうだが、
アダムワールドの日本で盾は廃れ、
楯突き弓矢を防ぐ様になり、
使う発想は無い…
「はわわわわ…」
ふと隣を見ると、
ゴブリンの子ども二人も、
尻餅を付いて怯えている。
ゴブリンの子から見たら、
私たち人間こそ恐ろしいモンスターなのだろう…
「大丈夫恐くない恐くない…
お姉ちゃんは人間だけど、
貴方たちの味方よ…」
ゴブリンの子二人の頭を撫でる、
固い皮膚に覆われていても、
幼い子どもなんだ…
青年は私を殺したら、
あっという間にこの子たちも、
容赦なく殺してしまうだろう…
私は再び盾青年に顔を向け、
睨み付けた。
「盾は要らない…
盾は私自身の命だ!!」
この子たちを守れるなら、
ただそれだけで何も要らない…