まともな食事
なんとかして勇者を助けたい…
教団の規模は違うが、
私も宗教虐待された側だし…
せめて勇者にとっての、
若本になれたら…
死なせない意味で!
休日もそんな事を考えながら、
河川敷を一人歩いていると、
子どもの泣き声が聞こえた…
「うえーん!」
無敵京ちゃんだ!
河川敷に座り込んで泣いている…
巨人やゴーレムを割った、
勇者キョウの力強さは、
微塵もない!
「京ちゃん!どうしたの!?」
「おねえちゃん…
おねえちゃんたちがきたのは、
ははうえかあにうえが、
よんだからだろって、
ふたりがちちうえに、
いじめられてて…」
やはりあの二人もDV!?
いやお前のがいじめられてんだろ!
家族より自分の心配して!
そんなとこ勇者ならなくて良い!
「大丈夫!お母さんお兄ちゃんも、
お姉ちゃん達が助けに行くから!
それより今は京ちゃんでしょ!
京ちゃん正直、
お父さんどう思う?」
「……」
「大丈夫!お父さんには絶対言わないから!
お姉ちゃんにだけ話して!」
「こわい!だいきらい!
がっこういきたい!ともだちほしい!
あそびたい!もうやだよお…」
あんな毒父、
好きな筈が無い…
こうして嫌える分、
まだドハワールドでの勇者ほど、
洗脳完了してないのか?
「よし!じゃあお姉ちゃんと友達になって!
今日は一日お姉ちゃんと遊ぼう!」
「えっ!?ほんと!?」
遂に勇者と二人きり…
だがあまりに皮肉過ぎる…
明らかに勇者痩せ細って、
お腹も鳴っているし、
取り敢えず近所のファミレスに、
勇者を連れていった。
「うわあ!?なにこれなにこれ!?」
「全部頼んで良いわよ、
お姉ちゃんお金有るから♪」
今度は毒なぞ絶対入れない!
本当のご馳走でおもてなしする!
本来一緒に食事は、
こっちのが普通なのだが…
「京ちゃん普段は、
どんな物食べているの?」
「え…むぎのおかゆだけだけど…
ちちうえがぼくはとくべつだって…
ちちうえたちはいろんなの、
たべているのに…」
麦粥だけ!?ラピスちゃんみたいだ!?
てか自分は普通の飯食うのかよ!
そんな特別要らん!
「ははうえとあにうえは、
こっそりひみつで、
いろんなのくれるけど…」
やはりグッドフェローとドルゼは、
この世界でもバプテスマよりは、
キョウに優しく良識有るのか。
悲しい食事情の話をしていると、
勇者が指差して頼んだ、
ハンバーグ、スパゲッティ、ステーキ、ローストビーフ丼、ケーキが届いた。
この世界では人間の筈だが、
やはり肉多めなんだな…
「それ全部食べて良いからね、
とらないからゆっくり食べて。
私はこのオムライスだけで良いわ」
「わあい!がつがつ」
食べる勢い早過ぎる…
本当に飢えていたんだな…
箸も握り箸…
明らかにまともな躾されず、
悲しい育ちの悪さだ…
「むぐー!ごほごお!」
「あーもう!喉詰まって…
ゆっくり食べてと言ったのに…
ほらこのジュース飲んで」
「このみずおいしい!
なんなのこれ!?」
「ドリンクバーも頼んだから、
それも好きなだけ飲んで良いわ、
混ぜても良い…」
勇者はケーキもヨルムンガンド毒でない、
普通のケーキに舌鼓を打った。
てかレジ会計する店長…
白髪で王冠みたいな黄色帽で、
体格良いしセイゴクー王人間態!?
他の店員も、
サスカッチ人間態だ!?
「君は可愛いから、
バナナ飴あげるっキー!」
「わあい甘い!」
対勇者作戦で頭悪過ぎて、
私は反射的に却下した、
セイゴクー王のバナナ案…
まさかここで効くとは…
会計してファミレスを出ると、
キョウは満腹で、
満面の笑顔になった。