新しい仲間と古い仲間
そして百足屋は木刀を杖に、
なんとか起き上がった…
「うーむ牝山犬…
龍千代一家に内大臣様まで、
色香で惑わしたとは…
大魔王の座は伊達ではないか…
そして南蛮武者修行、
遊びではなかった…」
「ところで百足屋さん、
貴方も武者修行に来ない?」
「なにい!?」
私はそこまでフェロモン出てない筈だが、
牝山犬の色香が自分に向いて、
百足屋は驚いていた。
「私たち北伐怪物帝国と敵対する、
南蛮モナカ王国剣術指南役に、
先生よりずっと強い剣豪、
勇者キョウて女傑が居て、
非常に手こずっているの…」
「龍千代以上…つまり、
お龍以上の女剣術指南役!?
世界は広いな…」
「しかも勇者キョウの師、
バプテスマは槍使いの僧兵で、
両手両足で十字槍を使う四槍流。
しかも鞭に変化して、
幾らでも間合いが伸びるの…」
「四槍流!?鞭!?
想像も付かぬな…」
「しかも私たちの鉄砲は、
連発出来るけど先に脇差し付けて、
銃剣にもしたいから、
槍術指南役の貴方に、
是非とも教えて欲しいの」
「鉄砲を槍に!?
有りそうで無かった発想よな!
しかしちょうど拙僧もそろそろ、
息子に槍術指南役を任せ、
隠居して武者修行に出たかったのだ!
わしも若い娘と出会えるかの!?
脚が百本有る様な…」
「脚の数は保証しかねるが、
扶桑に籠っていては見れぬ、
景色や経験ばかりなのは確かだ」
ムカデだから、
脚の数に拘り有るのか!?
しかし忠誠心で、
私たちに絡んで来たのかと思ったら、
先生に嫉妬混じりだったのか…
若い女の子にモテたがるとは、
意外と普通のおじさんだなあ…
節足動物だと私以外の女の子に、
敬遠されそうな感じもしたが、
このノリの軽さなら、
案外いけるかも知れない…
こうして槍術指南役、百足屋千作も、
晴れて怪物帝国入りする事になった。
「姐御~!大丈夫っすか!?
ん?もう終わっている?」
すると突然、
黒と赤の厨二配色の、
巨大な鳥の様なモンスターが、
上宮から現れた。
鳥と言っても角や鉤爪生え、
やや東南アジアぽい…
ガルーダ?迦楼羅鳥か?
「だ、誰!?これも扶桑朝廷の!?」
「何言ってんすか?俺すよ俺」
怪鳥の羽毛は引っ込み、
見覚え有るワイバーンとなった。
「サワイ!?貴女飛べたの!?」
サワイはあそこまで変身出来るなら、
破れた皮膜も再生出来そうな気がしたが、
ワイバーンを通り越して、
鳥になって文字通り飛んでくるとは…
「大倉、飛行を嫌う南蛮竜が、
自分を曲げてまで、
うぬを助けに来た事、
ゆめゆめ忘れるでないぞ」
あ、先生がサワイの肩持つの、
珍しいかも…
掘るより飛ぶのが早いからか…
「ありがとサワイ、ちゅ♥️」
「へへへ!飛んで来た甲斐有りました♥️」
武芸指南役一同は、
ポカーンとした顔でサワイを見て、
龍お兄ちゃんは懸命に変身も、
書き記していた…