戦略的決着
龍お姉ちゃんは確かに、
私と刀を打ち合いながらも、
上手いこと鵺の弓矢を払ってくれた。
百足屋は先生との打ち合いに集中し、
私への妖術攻撃しなくなり、
勇者時の様な空中戦をやっている…
大ムカデも飛べるのは知らなかったが、
強さは勇者以下イイヒー以上か?
「むっ!最初の一発以外、
なかなか当たらぬな…はっ!はっ!」
鵺は龍馬を操る、
蚕人の体を鱗粉まみれになりながら、
縦横無尽に姿勢を変えて、
私に騎射して来る!
そしてこれまた龍お姉ちゃんは、
私と打ち合うフリして、
両手の木刀や尻尾でも払う…
「お龍貴様!山犬娘を庇っておらぬか!?」
「父が父なら、子も子だな!?」
しまった!流石に気付かれた!
てか声で気付いたが、
鵺は雄で蚕人は雌なんだなあ…
扶桑の武芸指南役て、
男女比バランス良いな!?
「とえー!」
鵺は飛び上がって、
標的を龍お姉ちゃんに絞り、
矢を集中発射し始めた!
「きえー!」
蚕人は龍馬を巧みに操り、
後ろ脚二本で私を蹴って来た!
「ぐ!?」
龍馬は体もモーション大きいので、
人斬り丸の刀身で蹄を防いだ!
人斬り丸自体は無事でも、
持っていた私の体は宙を舞う!
「危ない!」
しかし土塀にぶつかり掛けた時、
龍お姉ちゃんは木刀を捨て、
私をお姫様ダッコでキャッチしてくれた!
剣術指南役なのに、
木刀より私を優先してくれるなんて、
まさにお姉ちゃん!
「お龍貴様!決定的だな!」
「吉田家はお家お取り潰しだ!」
鵺と蚕人が激怒し、
縁側で記録していた、
龍お兄ちゃんの筆が止まった。
「おなご一人に三人がかりの方が、
武芸指南役の恥!
まして国賓!貴方達こそ恥を知れ!」
龍お姉ちゃんは大小木刀を拾い、
はっきり私を守るために、
鵺と蚕人に対峙している!
確かにお家的には非常にまずいが、
私的にはとても嬉しい!
「ぐふ!?」
だがいつの間にか横では、
百足屋は倒れ込み、
先生は服破れ血塗れだが、
静かに仁王立ちしている!
伝承では龍に有利な上に、
間合い広い槍を両手で構えつつ、
百本脚で百の妖術使える、
百足屋の方が強そうに見えたが、
先生が勝ったのか!
しかもいつの間にか、
武器入れ替わっていて、
先生が木槍で百足屋が木刀!
間合いは槍のが有利とは言え、
慣れない相手の武器でよく勝てたなあ!
「龍千代貴様!腕を上げたな…
前まで四千五百三十二戦中、
二千二百六十七勝で拙僧が優勢だに!」
「これで戦績五分五分だがな…
武者修行と言ったであろう!
南蛮や北伐でその娘と、
遊んでいた訳ではない。
扶桑にこもっていた頃とは、
考えられぬ強敵にも巡り会えたしな」
百足屋は先生と互角で、
武芸指南役なら扶桑最強の槍使い…
勇者や司祭とも交戦した分、
先生のが戦闘経験豊富に!
師匠だけど先生も成長したんだ!
「ほう…これは何事におじゃる?」
龍お兄ちゃんはいつの間にか、
白虎公家にチクったのか、
縁側に連れてきてくれた!
文官なりの助け方だ!
立場上の公家も味方なら、
私と吉田家の戦略的勝利だ!
「これはこれは内大臣様…」
「龍之助元剣術指南役から、
大魔王も剣を学んだゆえ、
我らと稽古を…」
鵺と蚕人が、
訓練用具で襲ったのを利用し、
言い訳している!
白虎が内大臣なら、
玄武、朱雀のどちらかが、
右大臣、左大臣で、
八咫烏が太政大臣かな?
「血気盛んは結構なれど、
御所を血で瀆すでないぞ、
ほっほっほ」
白虎内大臣は笑いながら去り、
この場の一同は全員事なきを得た。