武芸指南役
単は流石に動き辛いので、
二枚残して脱いで襷掛けし、
先生は裃のみ脱ぎ、
木刀を二本取り出した…
「それと先生、
扶桑は本当にシンドの様に、
同盟国になるでしょうか?」
「龍帝陛下は我が弟子、
つまり扶桑はわしが、
実効支配しているからな!」
「でもあのムカデ人、
ずっとニヤニヤしてましたし、
一筋縄ではいかなそうですが…」
「うぐっ!百足屋か…」
百足屋って名前なのか、
まんまだなあ…
「百足屋は龍皇室の槍術指南役…
武芸指南役になる前から、
我と腕を磨き合った好敵手よ…
奴は栄田幕府将軍である、
刑部狸一族とも繋がり深きゆえ、
厄介だな…」
先生にもライバル!
虎ならさっき貴族に居たけど、
龍のライバルがムカデ…
体が長いのは同じでも、
脚が多いから大ムカデのが、
伝承的に強かったな…
そして武芸指南役=剣術指南役と思ってたけど、
剣以外も指南役居るよね…
てか江戸の将軍が狸て、
アダムワールド日本と同じだなあ…
「先ほどの床の呪詛、
術式的に百足屋が官女どもに、
教えてやらせたのだろう…」
百足屋も妖術使えるんだ!?
先生と同じく文武両道!
先生の妖術陣は八卦と漢字なので、
道教由来の陰陽道、
つまり蓬莱仙術がルーツなんだろけど、
さっき床に浮かんだ妖術陣は、
梵字とヤントラが出ていたので、
密教由来の修験道…
シンド法術がルーツなのかな?
西洋魔法はカバラ、ルーン、
つまりイスラエル、北欧だったが、
やはり東洋妖術は中国、インドか!
「武者修行で堕ちたな…龍千代!
牝山犬の色香に惑わされたか…」
すると噂の百足屋が現れた!
先が鼓状の木槍を持っている!
牝山犬て私だよね?
山犬と狼は調べると、
違いが余計分からなくなるけど…
槍術で法術だからか、
僧兵の様な法衣を着ている…
先生の幼名かな?
それで呼ぶとは、
相当付き合い古いな…
だが後ろに見覚え有る龍お姉ちゃんや、
見覚え無い弓を持った鵺、
坂本ではない龍馬に乗った白い蛾人…
おしら様の伝承的に蚕だな!
「むっ!お龍!?
何故そやつらと居る!?
寝返ったか!?」
「その言葉そっくりそのまま返すぞ!
主君を裏切り子を裏切り、
北伐で牝山犬を担ぎ上げ、
扶桑に仇なす朝敵!逆賊どもめ!」
公家聖獣は納得したぽかったけど、
百足屋は凄い反発している!
本当に狸にチクりそう!
「うぬらと違い武芸指南役は辞し、
お龍に譲ったから良かろう…
わしの今の主君は龍帝陛下ではなく、
この大魔王陛下よ」
「牝山犬の何が大魔王か!
貴様の様な色ボケジジイ、
我ら武芸指南役一同として、
断じて許しがたい!
纏めて成敗してくれるわ!」
百足屋と龍お姉ちゃんだけでも、
先生並みに強そうなのに、
弓術指南役や馬術指南役まで!?
四対二じゃん!
「大倉、最近多忙で殆ど教えておらぬが、
稽古は続けておるか?」
「ええ…人間態で兜割り自主トレ、
八割くらいは…」
「今日の稽古は中断ぞ、
うぬは人斬り丸を抜け。
他国の王を襲うは、
かなりの外交問題だからな」
「いや!私だけ真剣でも、
数で勝る武芸指南役相手は…
稽古用でも余裕で、
私を殺せそうですが…」
すると先生は鳥脚に似た、
鱗と鉤爪の手で私の頭を、
軽くぽんぽんと叩いて撫でた。
「今傀儡の様にうぬに、
わしの妖力を注いだ…
これで多少は対抗出来ようぞ」
私と先生は師弟らしく、
背中合わせに刀を構えた。
先生はいつも私とは、
次元が違う敵とばかり戦ったから、
ようやく共闘出来るのか!