扶桑神話
そして廊下を渡りながら、
先生は興奮した口調で話した。
「よくやった!
やはりうぬの弁は天下一!
わしは公家どもを褒めた覚えは一切無いが、
高慢な奴らを説き伏せるには、
言い負かすより謙遜よ…」
「エルフの里で先生達と、
徹夜で返詩考えた経験活かしました♪
あの時の先生のアドバイス通り、
相手の好みを考えましたからね」
「あの晩四人がかりの論を、
一瞬で思い付いたるは流石なり」
「まあ今回は若本が、
夢で龍帝に根回しも有りましたし…
そう言えば若本の扶桑での呼び名、
草薙大神て何なんですか?
アダムワールド日本では、
草薙の剣なら有りますが…」
すると先生は立ち止まって、
振り返りながら自分の袖から、
巻き物を取り出した。
「これが扶桑での魔神、
草薙大神ぞ」
先生が広げた絵巻物には、
古墳時代の男性装束を纏った、
ヤマタノオロチが描かれていた…
手足の袖にそれぞれ首が出て、
襟からは残り四本の首で、
髻の様な鰭が有る…
襟には勾玉の様なトゲが生え、
右手首は銅剣、
左手首は鏡盾を持って、
三種の神器を揃えている…
スサノオとヤマタノオロチ合体は、
なかなか乱暴に思えるが、
確かに草薙の剣なら、
スサノオ、ヤマタノオロチ、皇統が束ねれる、
スリーピースの欲張りセットだ!
先生が更に絵巻物を進めると、
草薙大神は川で女神と対峙している…
「あ、これあの女神ですか?
私が居た日本は、
ドハワールドで唯一、
女神が一番偉い国でしたが…」
「それは変わっておるな…
扶桑では女神は、
空亡御中主と呼ばれ、
崇められてはいるが、
草薙大神よりは格下ぞ」
空亡!?
占いやゲームから派生した、
21世紀になって生まれた、
歴史浅過ぎる最強妖怪!?
太陽だからとアマテラスと!?
名前的に天之御中主も!?
女神もスリーピースの欲張りセット!
「常世で誓約を行い、
草薙大神が噛み砕いた、
空亡御中主の剣で世界が…
空亡御中主が噛み砕いた、
草薙大神の勾玉で生命が生まれた。
そして空亡御中主が草薙大神を、
天の岩戸封印時は昼、
草薙大神が空亡御中主を、
天の岩戸封印時が夜になるそうだ」
日本神話と似ている様で、
微妙に違う!
ちょっとアポピスとラーの、
エジプト神話要素も!?
てか日本神話では有耶無耶な、
人類誕生はそこなんだ…
「ゆえに草薙大神も女神、
空亡御中主の元使いで、
しかもうぬの侍女だった事実は、
未だに受け入れ難くはある…」
「先生は先生で、
若本に驚いたんですね…
詳細は後で本人に聞きます…」
「そうだな…おおっと、
神話の話をしたら長くなったが、
うぬとは言葉より剣を交わしたかった。
そこの庭に下りよ」