異世界しらす、うしはく
御簾が上げると、
雛人形の男雛の様な装束で、
冠を被る黄色い五本指の龍人が居た。
なるほど東西南北を、
聖獣の公家が司るからには、
中央の帝は黄龍か!
五本指も皇帝にしか、
許されない指数!
かなり中国寄り配置だが、
アダムワールドでも中国より日本のが、
皇室や元号など古代中国慣習が、
残っているみたいな?
扶桑でこうなら、
蓬莱どうなのか、
気になるな…
「大口真神なる、
狼の農耕神は知らぬが、
朕の夢枕に草薙大神が立って、
そなたの事なら話していた…
扶桑の瑞穂を救う、
妖怪の女神、
大妖姫だと…」
草薙大神!?
これまた有りそうで無いネーミング…
若本の扶桑での呼び名か?
龍帝に夢で先に連絡ご苦労だが、
私を妖怪の女神とは、
盛った称号だなあ…
姫呼ばわりは悪くない。
じゃあ大妖姫も龍帝に、
威厳たっぷりに答えるか…
「私は船ではなく、
草薙大神の御力で、
難波に降り立ちました…
私は草薙大神の巫女…
いや草薙大神が私の式神とも、
言えるでしょう…」
「草薙様が式神!?」
「騙されぬぞ小娘!
我らの崇める扶桑最高神を、
冒涜するとは許せぬ!朝敵!」
「おや、帝の夢枕に立ったのに疑うとは、
貴方こそ朝敵では?」
「ぐっ!?」
ここで公家聖獣を言い負かすのでは、
納得と違い反感を生むので、
そろそろヨイショしてみるか。
「私は南蛮の地で、
吉田師範からよく聞きました…
蓬莱ら易姓革命し続ける国ばかりな中、
扶桑だけが万世一世の統治をしろしめすのは、
皇統だけでなく公家の皆様も、
徳を持って民草と国土を、
守り続けたからこそ…
それが民草が妖怪変化した程度で、
揺らぐと思えませぬ…
最近即位して、
うしはくばかりの私に、
是非ともこれからしらせ方を、
教えて頂きたく願います」
領土的には私の怪物朝廷が格上だが、
兄貴分と歴史的には、
ドハワールド1安定した、
扶桑朝廷を立てておこう…
生意気な後輩はまだしも、
慕う後輩をそう無下には出来まい…
「しばし待て、
この場におらぬ公家達や、
栄田の幕府とも…
ああそなたと同じ、
『栄』だったな」
日本ぽい国でエデン!?
私と同じ栄!?
江戸ぽい場所に幕府有るのか?
普通異世界の日本ぽい国は、
先ず徳川ぽい将軍に謁見だが、
私それを飛び越して、
京都の帝に謁見しちゃったなあ…
いやそれより龍帝の、
「この考えさせて」は、
かなり脈有る「考えさせて」だよね!?
謁見が終わり振り替えると、
引き戸の横に先生によく似た、
白髪で女神の青龍人が机を構え、
筆で何かを懸命に書いていた…
そういや先生には、
吉田流妖術を継いだ、
息子居るとも聞いたな…
書記でも有るんだな…
水妖術で墨汁を筆に供給し続け、
硯に膠で固めた墨じゃない!
昔の書道よりも、
学校の習字や漫画家の付けペンに近い!
しかし親子の再会の割に、
先生と息子は気まずそうに、
顔を逸らしている…
龍お姉ちゃんが剣術指南役継いだが、
やはり父としては息子に、
剣を継いで欲しかったのかな?
息子側も継ぎたかった、
負い目が有るのかな?
確かにモナカ王国でも、
男が剣で女が魔法が大多数だったが、
私の怪物帝国や勇者の無敵戦隊など、
強いごく少数的には、
女に剣任せて、
男が魔法でも良いんだよと教えたい…