龍おばさんの推し活
廊下を渡り居間に行く途中、
先生は思わぬ事を言い出した。
「大倉、南蛮竜と貝仲だと、
お辰に言え」
「な、なんで///」
「長旅から帰って来た亭主が、
若い女二人も連れ帰り、
心穏やかな妻が居ると思うか?」
「な、なるほど…
先生優しいですね」
先生は私の師匠兼部下だが、
「これがわしの今の主君」
と言われても信じず、
変な目で見るのが普通だろな…
だが居間のお辰さんは、
私たちの想像を越えていた。
「キャ~!隈様~!」
先生と似た頭が龍でいて赤く、
龍お姉ちゃんの様に髭無いが、
人型で和装だった。
お辰さんは玄関でグッズ見た、
白熊の歌舞伎役者を推して、
自作内輪を両手に持っていた。
白隈太夫て名前だと、
お辰さんの額の鉢巻で知った。
モナカ王国や怪物帝国では、
魔法の鏡がテレビポジだが、
扶桑では床の間の掛け軸がらしい。
縦長で見辛くないのだろうか?
「おいお辰!
亭主が長旅から帰ったなら、
出迎えぬか!」
「あぁあんた?うっさいわね~
今から隈様の見栄切りだから、
黙ってて!」
龍お姉ちゃんから逆算し、
お辰さんもお堅い感じと思いきや、
自分より若い男性アイドル推すとは、
普通のおばさんじゃないか!
私のお母様より!
「すまぬ大倉…
武者修行前のお辰は、
こんなではなかった…」
「でも歌舞伎役者に貢ぐのは、
良い趣味だと思いますよ。
私の母は邪教僧に、
父の富全部貢いだせいで、
我が家は困窮してました」
「そうなのか…そうだったのか…」
先生は私の人嫌いの片鱗を知り、
冷や汗をかいていた。
「あぁそれと私、
この南蛮竜と…」
「貝仲っす♥️」
「ふーん…ボリボリ」
私とサワイが抱き合っても、
お辰さんは興味を示さず、
餞別を食べ始めた。
嫉妬的な興味持たれるよりはマシだが、
せめてこちらを向いて欲しかった。
「あっ!それより見て!
隈様の見栄♥️
男前過ぎない!?」
「は、はあ…」