冒険者ギルドの手配書
次に私たちは本題の、
冒険者ギルドに向かう事にした。
ギルドは酒場風の建物で、
冒険者達は他街行き来するのも有り、
領主の死霊術を恐れる住民と違って、
血色良く活気に溢れていた。
中に入ると人が多く、
ハローワークと違って食事席も有り、
フードコートにも近かった。
他転生者ならギルド登録し、
初心者離れした規格外の適性に、
皆を驚かせるロケットスタートするだろう。
だが私が求めているのは優越感でなく、
愛する者たちを守る事だ。
大きな掲示板を見ると、
複数の依頼書、手配書が貼り出されている。
「これかな?」
モンスターだけでなく人間とも会話出来たからか、
筆記体のギリシャ文字にも、
楔型文字にも似た文章が読めて、
「討伐依頼ワイバーン使い」と、
私であろう文面の手配書が有った。
交番や駅の、
リアル容疑者手配書は気持ち悪いが、
海賊や西部劇の手配書なら、
格好良い感じがして憧れ有る。
しかし絵に描かれた私は、
典型的な老いた魔女として描かれ、
日本刀でなく両刃剣を掲げている。
背景のサワイは皮膜が破れておらず、
空を飛んでいる普通のワイバーンで、
かなり間違っている。
伝聞のぼんやりしたイメージだけで、
描いた絵だった。
このワイバーンは地面から襲うとも書いてたが、
絵師は思い込みで飛ばした様だ。
まあ情報化進んだ現代日本でも、
指名手配犯はそうそう捕まらないから、
中世ヨーロッパレベルでは、
抽象的な情報になってしまうのだろう…
しかしこの絵の私、
悪の女怪人みたいで格好良いかも?
手配書貰おうかな。
「勇者様本当に素敵だわ~♪」
「俺たちもいつか魔王倒して、
こうなりてえな!」
冒険者の男女二人が、
ギルド全体の告知ポスターに、
胸をときめかせている。
ポスターには金髪碧眼色白で、
いかにも万人受けしそうなイケメン勇者と、
巨大な斧を肩に、
ビキニアーマーを着た逞しい女戦士。
後ろに魔導書を持つ、
厳つく小柄な魔法中年男と、
十字架の十字槍を掲げる、
司祭お爺さんが描かれている。
こちらは多分絵師が、
本人達を見ながら描いたのか、
はっきりした絵柄だった。
誰よりモンスターを傷付ける連中なら、
いずれ敵対する事になりそうだが、
新人冒険者からも逃げる私たちとは、
次元が違い過ぎるだろう…
今はそれより受付に行き、
自分の手配書を貰う事にする。