大魔王の祝福
「オーベロン王、
サナってエルフ知ってる?
クエレブレと駆け落ちした…」
「あの里一番の恥さらしアマですか!?
最近は貴女やゴートの名まで語る、
不届き千万!
追っ手が見つけ次第、
その場で粛清致しますので、
ご安心を!」
「あの二人は本当に、
私とゴート庇護下なんだけど?
なに?大魔王に逆らうの?」
「えぇ!?そうだったのですか!?」
「今すぐ追うの中止なさい、
何ならここに二人を呼びなさい、
私自ら祝福して結婚させるわ」
「しかし!エルフ史的に、
ドラゴンどもとは不倶戴天でして、
二人の仲を認める訳には…」
「オーベロンくんさぁ~
あんたはあの面倒な詩なんかより、
少数派の差別解消やインフラのが、
よっぽど素敵だと思ったんだけどな~」
「えっ!?そっち!?」
妖精達は本当に上辺の、
花の美しさに現を抜かし、
支える根の美しさを分からぬ様だ。
オーベロン王自身すら、
あの生活水準引き上げを、
誇ってなかった反応だ。
「でも結局助けるのは、
自分たちエルフの派生までで、
他種族はどうでも良いんだ~?
人狼の私は口説いた癖に…」
「貴女は人狼と言っても、
他の人狼どもとは違います!」
「人狼ども?
やっぱり見下してんじゃん!
今までの妖精王よりは名君だけど、
所詮はエルフなんだ~?」
「いえ決してその様な事は…」
「ならさっさと、
サナ、クエレブレの仲も、
認めなさいよ!
自分だけ他種族となんて、
我が儘過ぎるわよ」
「申し訳ありません!
二人の仲を認めます!
認めさせます!」
「エルフは長生きだから、
どうせ私が死んでからとかでしょうから、
今すぐ!早く!」
「里に帰ったら直ぐ!」
「違う!精霊魔法で、
今すぐ追っ手と他エルフに連絡!
早く!」
「は!はい!
お許し下さい大魔王陛下!」
「謝るのは私でなく、
あの二人に!」
土下座するオーベロン王の頭を、
私は踏みつけながら催促させる。
私に好意を抱くオーベロン王だから出来て、
他エルフ男にやろうものなら、
呪詛で私の足が無くなっているかも…
逆らうオーベロン王への、
大魔王ぽい強硬手段に、
他亜人王の態度も変わった。
バルバトス王は、
腰を抜かして震え上がり、
ホーブ王は見えないながら、
この空気を察して汗を流し、
ヴォイヴォダ王は私が、
真祖を超越した事に更に青ざめた。
セイゴクー王はこの、
マウンティングノリ一番好きそうだが、
私がハーレム入り不可能の、
自分以上のボス猿なった事を実感。
自分より強いであろう雄の、
オーベロン王がだから尚更だ。
ハッカー王は私の甘さ指摘していたが、
辛い今に圧倒されている。
カノー王はキューンと、
怯える仔犬の表情だ。
ラピスちゃん女王の中で私は、
ドーナ女王より優しいお姉ちゃんだったろうが、
「栄子お姉ちゃんこんな事するの?」な、
怯えた顔で見上げている…
恐がらせてゴメンね!
だがこの中でドーナ女王は、
唯一笑顔だった。
私がナメられない、
女王の域に達した事を、
認めてくれた様だった。
因みにサナとクエレブレは、
追っ手エルフから私の話を聞いても、
なかなか信じようとしなかったので、
ゴートに私自ら転位させて、
直接説明して落ち着かせた。
狐に摘ままれた表情の、
追っ手エルフ達は、
怪京城の怯えて震えるオーベロン王を見て、
全てを察した…
オーベロン王は私に好意どころか、
膝を屈したのだと。