敗走
私たちは食料には困らなくなったが、
戦闘では重大な限界に達していた。
「お前だな!?最近話題になっている、
ワイバーンを使役して人々を襲う、
頭のおかしい女は!?」
「ギクッ!そうだけど…」
「お前らには報償金出てんだ!」
「安いけどこれが初めての、
俺たちパーティにピッタリだ」
今回の若い冒険者パーティは、
私たちをはっきり認識している。
またサワイが地面から襲う手筈だが、
冒険者たちの足元に大きな魔方陣が広がる。
どうやらサワイを警戒した、
私と同い年くらいの魔法使いの娘が、
地面に結界を張って防いでいるのだ。
「うおおお!やっちまえー!」
私より若く小柄な少年が、
剣を手に襲い掛かって来て、
思わず刀で受けるも、
鍔迫り合いの圧が凄まじく、
体を圧されてしまう…
「とりゃあああ!」
私よりやや年上くらいの青年が、
斧を手に斜め上から斬りかかる。
私は刀を引いて後退し、
足で地面を蹴って、
土を斧青年に浴びせた。
「うわっ!?」
「卑怯なー!」
「PKがー!」
私はたまらず逃げ出し、
それを若い冒険者パーティが追いかける。
新人とは言ったが冒険者なる前に、
厳しい鍛練を積んだ事が伝わった。
私が今まで勝っていたのは、
奇襲して卑怯な騙し討ちしたからで、
状況を把握して正面から本気を出されたら、
現代日本の女の子と、
羽根が破れたワイバーンでは、
ひとたまりもない…
思うにチート転生者とは、
ブラックバスやマングースの様に、
悪気無くとも在来種を駆逐し生態系を破壊する、
侵略的外来種とも言える…
私はせいぜい生まれた時から温室育ちで、
野生で戦い続けた在来種に返り討ちにされる、
世間知らずなペットと言った所か?
いやもう少し外来種に括るなら、
スズメバチにニホンミツバチほど対抗出来ない、
セイヨウミツバチ辺りか?
「姐御!こっち!」
進行方向先に、
サワイの頭が見えたので、
穴に飛び込むと深く、
サワイの背鰭が並ぶ背中に着いた。
「急に消えたぞ!?」
「転移魔法か!?」
「まだ遠くには行ってない!
探して!」
確かに遠くでなく真下だが、
何とか新人冒険者から逃げ延びた。
「姐御すいやせん!
あいつらの足元すげえ固くて、
引きずり込めませんでした!」
「それは仕方ないわ、
あいつら足元に結界張ったみたいだし…
でも貴女が潜るワイバーンで良かった、
普通に飛んで逃げてたら、
魔法であっさり撃墜されたかもだけど、
今こうして地面に逃れたし」
「あざっす!でも俺らの手の内バレたなら、
新しい手考えなきゃすね!」
何か無いだろうか?
私たちの弱点を補う、
二頭目のモンスターとか…