ヒドラカウンセリング
まだ悪魔帝国内の軍だが、
私たち怪物帝国軍こと怪物の騎士団は、
ゴート転移魔法で、
マークの街近くに下り立った。
そこは自然豊かであり、
大きな湖が有った。
ハイキングに来たかったが、
今の目的は行楽でなく戦争だ!
すると湖面から突如、
九本の長い首が…
世界的に最も有名な多頭竜、
ヒドラだ!
巨大怪獣に扱われがちだが、
ヘラクレスと対決絵画みたく、
神話に忠実な小ささだ!
「まさかあのヒドラに今、
出会えるなんて…吉兆!
それは戦勝間違いなしだわ️」
私は世界的ハリウッド名優と、
遭遇した様な激しい高揚だったが、
ヒドラ自身は違っていた。
「何だお前!?人間か?
よってたかって俺を、
不死身だからと退治に来たな!?」
「違う!私は人狼!
向こうの人間に奪われた、
魔族の都を奪還に来たの!
貴方たちモンスターのために!」
「信用出来るもんか!
お前も魔族どもみたいに、
俺の毒欲しさで来たな!?」
バルバトス王達の、
アジ・ダハーカの扱い的に、
もしやと思っていたが、
ヒドラも魔族に虐げられていたのか!?
確かにヒドラの毒は、
命有るなら即死で、
不死身なら苦しめ続ける猛毒で、
利用したヘラクレス自身も、
最後は死因になったが…
「違う!毒を軍事利用じゃない!
ここに貴方が居ると知らなかった!
あ、そうだ、
何なら私を食べて良いわよ」
「姐御!いつも通りのノリすが、
今じゃないでしょ!」
「そうなり!
大将のうぬを今欠いて、
わしらが戦で勝てるか!」
サワイと先生が必死で止め、
他の怪物の騎士団にも、
動揺が広がっているのを感じる。
だが今はヒドラ最優先だ!
「俺が飲み込んだら自爆して、
再生封じるつもりだな!?
そうは行くか!
みんなみんな、
俺を殺す事と利用する事しか、
考えてないんだ!」
そう言うとヒドラは、
湖に逃げる様に潜った。
湖に棲んでいるのも、
再生出来ない炎攻撃を、
防ぐためなのだろう…
体の傷は再生しても、
心の傷はそうではなかった…
私の何が怪物の魔女だ!
何がモンスター専門カウンセラーだ!
どうすればヒドラの心にも、
寄り添えたのだろうか…
私の心も沈んだまま、
マークの街行軍に戻った。