ワイバーン卵料理
「しかしこれどうやって割るの?
手で割れる固さじゃないけど…
刀の柄尻で叩いてもビクともしない…」
峰打ちでも刀が負けるんじゃないか?な、
不安有る殻の固さだ…
「その辺の岩にガツンとぶつけるんすよ!」
自分が産んだ卵に何を言ってるんだ…
無精卵なら容赦しないのか?
昔卵狩りで鶏が、
自分の卵食べてカルシウム補給するのは見たが、
そのノリで会話されても…
岩は探すと微妙に見つからないが、
まあまあな岩を見つけた。
「えい!」
おぉ確かにひび割れた…
ここから柄尻で細かく叩いて、
亀裂を広げてと…
「穴空いたあ…
でも白身の水面張力で、
小さな穴では全然出ない…」
柄尻を突っ込み、
てこの原理で抉じ開け、
掌が入る大きさの穴は空いた。
「うぅ凄い粘り…」
サワイ本人が言う通り、
確かにあまり美味しくない…
白身が厚過ぎて黄身まで手が届かない…
殻と白身は黄身を守る存在だが、
確かに!
鶏の卵ではここまで卵の機能を、
実感する事は出来なかった…
「鶏?そうだ!」
私は石と乾いた木の枝を集めて、
風通し考えて並べ、
ワイバーン卵を上に乗せた。
「サワイ木の枝に小さい炎!」
「何か分からないすが…」
サワイの弱火ブレスで、
焚き火をする事が出来た。
サワイが居れば火起こしに困らない、
キャンプに居ると便利なワイバーン!
他モンスターから守る番犬にも、
羽根が寝袋やテント代わりにもなる!
加熱を待っている間に、
刀で木片を裂いて削ってお箸にする、
木製スプーンにしたかったが、
窪みが加工し辛かったので、
簡単な箸にした。
「完成!ワイバーンのゆで玉子風卵焼き!
いや目玉焼きかな?」
よく分からないワイルド卵料理、
やはり熱いが箸で少し摘まんで食べる。
塩コショウは無いが、
生の時より遥かに食べやすい!
「姐御それ美味いんすか!?
俺にもちょっと!」
「食べて大丈夫かしら…
はいあーん」
サワイの鋭い牙が並ぶ顎に、
白身と黄身を入れて、
牙の隙間から箸を引き抜く。
「どう?」
「今までずっと炎や卵出して来ましたが、
こんなの夢にも思わなかったっす!
美味いかも!?」
動物はだいたい猫舌と思っていたが、
ドラゴンは火を吐くから、
熱い食べ物平気なのか…
現代日本では絶対知り得なかった、
新情報だ。
私たちは人間に換算したら、
凄い変態行為をしている気がしたが、
そもそも普段食べている卵も、
鶏の無精卵だったな。
異世界ドハワールドのワイバーンにも、
現代日本の鶏にも感謝だ。