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転生したので異世界でショタコンライフを堪能します  作者: のりたまご飯
第一章 ショタコン、異世界に立つ
5/30

Part5 夜中

「ねえ、リオンくん、リオンくんってば…」


「んあ…?」


まだ周りは真っ暗なのに、耳元で聞こえる声に起こされた。

声の主はリュイだった。


体を起こして時計を見ると、まだ深夜の2時。

窓の外は雨の音がさっきよりも明らかに大きくなっていて、雷も鳴り始めた。


目線をリュイに戻すと、子犬のように体をぶるぶると震わせながら、俺の方を見ていた。


「あのね、さっき雷で起きちゃって、、それで、、」


しどろもどろになりながらリュイは一言ずつ話していく。


「その…怖いから…、、、一緒に、、寝ていい…?」


なるほど…雷で、、怖くてね、、

一緒に寝る、ね…。一緒に…


「そうだな、、さっきからずっと鳴ってたからな…。んじゃあ、ほら」


布団をトントンと叩くと、リュイはそのまま中に入ってきた。

そして布団から頭を出すと、俺の方をむきながら


「ごめんね…ありがと、、」


「大丈夫。一緒に寝るとあったかいし」


「じゃあ、くっついてもいい…?」


ほう…くっつく…

くっつくな…なるほど。

うんうん。くっつくくっつく。うん。


「おう。」


「…」


するとリュイは布団に顔を潜らせたかと思うと、俺の胸に顔を埋めるように全身をくっつけてきた。

布2枚を挟んだそのさきに、リュイの体があり、そして体温が直に伝わってくる。

俺の目は完全に覚めてしまった。


スースーと寝息を立てながら

天使のような顔立ちをしたリュイを前に、俺は胸の鼓動が早くなるのを直に感じた。

なんとかしなければいけないと咄嗟に思い付いた苦肉の策として、

左手をリュイの頭に持っていき、数回撫でた。


ふさふさとした黒い髪が、俺の邪念に満ち溢れた心を清めていく…。



…なんとか収まった。

しかし、幼馴染とはこういうことなのか、、

前世で読んだショタBLにも、こういうシチュエーションがたくさんあった気がする。

けどほとんどはその後にヤりシーンがあるんだけどな、、。


「ガッシャーーン!!!」


「ひゃぁっ…」


近くに大きな雷が落ちたのか、大きな音がした後、リュイが胸の中でビクッと跳ねた。

まだ寝てなかったのか…。


目をぎゅっと閉じて俺にしがみつくリュイに、俺は妙な感覚に襲われた。

これが母性というものか…?


さっきしたように、また手をリュイの頭の上に持っていくと、そのまま数回撫でる。

すると、ぶるぶると震えていたリュイの体は落ち着き、また寝息を立て始めた。


そして、頭を撫でているうちに、俺も再び眠りについた。


ーーー


翌朝。外は雨こそは上がってはいたが、じめじめとした湿気は相変わらず残っていた。

そして俺の髪が爆発していたのも言うまでもない。


リュイは同じ姿勢で俺の顔と同じ高さに寝ていた。

起きた時に目の前に顔があったからちょっとだけびっくりした。


正直キスしてもバレないんじゃないかと思ったが、謎の力でなんとか事なきを得た。


時計を見ると、短い針が7を少し過ぎたところを指していた。

どうせならもう少し寝るか…そう思ったが、髪の毛が邪魔してうまく眠れないうちに、目がすっかり冴えてしまった。


これじゃ到底寝られないということで、髪の毛をなんとかするためにリュイを一人部屋に残し、俺は洗面台へと向かった。

この世界における魔力の定義は、実は今のところまだよくわかっていない。

魔術を扱う人もそれほど見たことがないし、どのように利用するのかもなおさらである。


くしと水を使って、なんとか普通の天然パーマボーイのように整えて、部屋に戻ると、リュイはすでにお目覚めだった。


「お、おはよう…リオンくん、、」


「おはよ!よく眠れたか?」


「うん…。昨日は雷で怖かったけど、リオンくんが守ってくれたおかげだよ!」


そう言われて俺は嬉しくなって、ついリュイに抱きついてしまった。

朝の爽やかな匂い…なんたる美徳。


とまあ、無事朝のショタ成分の補給も済んだところで、一階に降りて朝食をいただく。


「それにしても夜の雷雨は酷かったわね…、、エトワールさんたち、無事だといいんだけど…」


「梅雨の時期にあれほど降るのはおかしいな…今年は魔力の影響もあり得るが…。」


父と母が、朝ご飯を食べながら昨晩の天気について話していた。


「おはようございます!」


二人で声を合わせて挨拶をすると、そっちの二人も笑顔で挨拶を返してくれた。

朝食は昨日とほぼ同じ、パンとスープだったが、今日はハムもついていた。


「そういえば、北の方の街道が通行止めになっているらしい。おかげで今日到着予定だった荷物が3日遅れになるそうだ…まったく困ったもんだ」


「北…それってエトワールさんたちの行った方角じゃ…」


「確かに、北の方で調査任務に当たるとかなんとか…これは当分帰ってこれないかもしれないな…」


父がそういうのを聞いて、俺とリュイは愕然とした。


「あ、あの…お母さんたちは、大丈夫なんですか…?」


リュイが怯えたような顔で母に話しかける。


「大丈夫だとは思うけど、もしかしたら今日は帰ってこれないかもしれないわね…」


「そ、そんな…」


心の中で一瞬だけガッツポーズをしそうになったが、リュイが悲しんでいるんだ...そんなことをするわけにはいかない。


ご飯を食べ終わった俺は、暗い顔をしたリュイと共に、もう一度俺の部屋へと向かった。

外では再び小雨が降り出した。


「お母さんたち…大丈夫かな、、雨に流されてたりしないよね…、、お仕事頑張り過ぎて、死んじゃったりしないよね…」


リュイの顔はどんどん暗くなっていき、そしてそれと同時に大粒の涙がポロポロと溢れた。

俺はそれを見ると、すぐさまリュイに抱きついた。


「ふぇっ…り、リオンくん…?」


「大丈夫だよ。そんなことにはならない。みんな元気だよ。」


俺はリュイの頭を撫でながら慰め続けた。

怖いよな…。無力は…。


自分が何にもできないクズだと気づいた時には、自分の大事な人はもう、そばにはいなかった。

その時泣いていた俺に、寄り添ってくれた人もいなかった。


けど、リュイには泣いてほしくない。

だって、君の未来はまだまだ長いんだから。


「俺がついてるから大丈夫。」


「…うん、、ありがと…ぐすっ…」


そのまま5分間ぐらい、俺たちは抱き合い、慰め合った。



しかしその数時間後、リュイの両親はあっさりと現れた。


「昨日の大雨、早めに関所を通過しておいてよかったです…。あと数時間でも遅れていたら、足止めを食らっていたでしょう…。」


リュイのお父さんがうちの父と会話をしている。そして当の本人はお母さんに抱きついて離れない。

二人とも無事でよかった…。じゃないと、リオンが悲しんでいただろうから…。


なんて、、、俺はリュイがもう一泊家に泊まることを期待していたが、その期待はあえなく散ってしまったのだ。

それから3日経った頃、ジメジメした空気は風に運ばれて霧散し、やがて梅雨明けを迎えた。


続く

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