Part22 一人の日
翌朝。
リュイはやはり具合が良くないようで、今日はお休みするということだ。
俺はいつも二人で歩いていた通学路を一人で歩いていく。
昨日のような激しい風は止んだが、今度は太陽が雲に隠れてしまい、昨日より体感数度ほど下がった気温を全身で感じているところだ。
リュイがいなくなると、いつもは楽しいはずの通学路がものすごく寂しくなる。
毎日交わしていた会話もすっかり無くなり、俺はただ一人周りを眺めながら道を歩いていた。
朝だからだろうか。大通りは人々で賑わっていた。買い物に出かける人々、そして店を営む人々。
「うう…。」
目の前がふらっとぐらつき、思わず転びそうになる。
「っはぁ…はぁ…」
数回ほど深呼吸をして見ると、少し楽になった。
そういえば前世の時も、こういうのが続いた時期があったっけ…。
学校に向かう途中、駅で眩暈を起こして倒れたり、、、。
大通りを抜けて、学校の敷地内へと到着する。
教室へと入ると、いつもこの時間には来ているはずのエルが来ていない。
とりあえずいつも座っている席の方へと向かい、腰を下ろす。
隣に誰も座っていないことに違和感を抱きながら、授業が始まるまで荷物の整理をする。
ーーー
「えー、今日は、体調不良でリュイ・エトワールが欠席。家族の事情でシエル・クレモンティーヌも欠席だ。」
朝の会が始まると、リュネット先生は淡々とした口調で話した。
エルもお休みか…。
昨日も特に何も言ってなかったし、家族の事情ということは、おそらく中央貴族絡みの何かだろう。
ということで、俺は今日に限りぼっち生活を送ることとなった。
いつもほぼリュイとエルの二人にしか話しかけないので、こういう時はどうすればいいのかわからなくなる。
とりあえず大人しく授業を受けて、いつも通りにお昼を食べる。
一人でいると、隣に誰もいないので逆に授業には集中できる。しかしお昼は話せる相手がいないので一人で黙々と食べることしかできない。
とはいえ久しぶりに一人でご飯を食べた気がする。なんだか前世の学校生活を思い出すなぁ…。
5分ほどでお昼を済ませると、特にやることもないので校舎の中を散歩しに出かけた。
こうしてみると、やはり国で一番大きな学校なだけあって、生徒の数は半端ではない。
窓の外を見ると、空には薄暗い雲がかかっており、夜にでも雨が降り出しそうだった。
風は相変わらず、ビューという音を立てて激しく吹いている。
時計を見ると、授業が始まるまであと40分。
俺は初等部の校舎を抜け出し、中等部の校舎へと向かった。
一年生が勝手に中等部に行っていいのかって?
実は校舎間の移動に関しては特にこれといったルールはない。
初等部でも中等部、高等部の校舎に行ってもいいし、またその逆も然りだ。
でも大学に関してはまた別のルールがあるらしく、大学生以外は立ち入り禁止になっている。
とりあえず初等部校舎から一番近い中等部校舎の方に潜入してみようと思う。
レンガ造りの建物で、外観は初等部とさほど変わりはないが、大きさに関しては初等部の倍はある。
生徒数ももちろん2倍以上はあるがな。
生徒たちは10歳から15歳、日本で言う小学校4年生から中学校3年生にあたるまでの6年間を、ここ中等部で過ごすことになる。
校舎は5階建てになっており、それぞれの階にいくつ科の教室が別れている。
さすが中等部。初等部のような和やかな雰囲気ではなく、いささか厳しい空気が感じられる。
周りにいる生徒たちの高さも初等部とは大違いだ。
中学3年生などは、高い子で170cmぐらいだったっけ。
俺は今やっと110cmを超えたぐらいだから…。
俺の1.5倍もの身長を持っている人たちがうじゃうじゃいるというわけだ。
中等部の校舎では、他の初等部の生徒はあまり見かけない。
さっきすれ違ったのでも2、3人ぐらいだろうか。
しかもおそらく兄弟などの関係でここにいる生徒たちだった。
やることもないし、そろそろ帰ろうかなあ…。
そう思っていると、1階の食堂に、見覚えのある髪色が見えた。
オレンジ色の髪の毛は、中央貴族クレモンティーヌ家の象徴。
身長からして、あれはおそらくエルの2番目のお兄さんだ。
そう、昨日の帰り際に話した(いじめた)人ね。
このまま帰ってもやることはないし、ここは思い切って話しかけてみることにする。
続く




