Part10 オレンジ髪のあいつ
次の日。
昨日と同じぐらいの時間に起床し、そのまま母が用意してくれた朝食をいただく。
カバンと制服をビシッと決め、忘れ物がないかチェックをすると、そのまま玄関で待ってくれていたリュイの元へ向かう。
「おはようリオンくん!」
「リュイおはよ。今日も頑張ろうな」
「うん!」
朝から元気な挨拶で、こっちもますます元気になりそうだ。
朝日よりも眩しい笑顔は、1日の活力になるに違いない。
今すぐ抱きしめたかったが、道のど真ん中ではやめておく。
「今日は普通の授業?っていってたけど…」
「さあ、何をするんだろうな」
昨日の教訓を生かし、俺は思わず先輩風を吹かしてしまわないように注意した。
しかし大体の学校といえば、最初の数日はオリエンテーションから始まり、自己紹介や何を学習するかなどを学ぶものだろう。
特にこれと言って心配することはない…はず。
「だけど…うう…鞄が重い…」
手提げ鞄を両手で持っていたリュイは、苦しそうな表情を浮かべていた。
「ああ…。今日は教科書が、、、」
昨日担任の話にあったのだが、授業が始まる今日は教科書を学校に持ってこなければならないようで、いくつもの教科の厚い本を鞄に入れて持つ必要がある。
確かに意識すると、手提げ鞄の中身が少し重たい。
「こっち側、持つよ」
「わっ…ありがとリオンくん」
右手で自分の鞄を持ち、左手にリュイの鞄についている片側の持ち手を握る。
前世の体じゃこんなものは重くもなんともないが、今は7歳の体。
成長期にも入っていない子供の身体にとっては、少しきついかもしれない…。
「大丈夫?リオンくん、、、そっち、自分の荷物もあるんでしょ?」
「全然平気!任せておいてよ」
こんなことを言っているが、実は痩せ我慢をしている。
理由は単純明快。もちろんリュイの前ではいい男を演じたいからだ。
とはいえ…。
くそう…授業初日から、くたくたの状態での登校になってしまった。
数十分の通学路をリュイと話しながら進み、俺たちはジュベナイル中央学校に到着。
敷地内に入って一番近くにある古い校舎、初等部の中に入っていく。
今日は通常授業だからか、1年生だけでなく他の生徒たちも多く集まっていた。
初等部なので、一般的にいう1年生から3年生しかいないが…。俺にとってはショタが多く集まる天国だ。
後で軽く数時間ほど観察しておこう。
「ありがとねぇリオンくん…。鞄、ほんっとうに助かったよぉ」
「俺もリュイと一緒に登校できて楽しかったし、全然大丈夫だよ!」
「とりあえず、クラスの中に入ればいいのかな?」
「でも、この教科書、どうすればいいんだろ…。」
「あ、ほらあそこ」
俺は教室の外に置いてある細長いたくさんの物置を指差した。
他の生徒も数人ほどおり、鞄の中から荷物を取り出し、中に置いているようだ。
これはロッカーのようなものだろうか。しかも前世でアメリカのドラマとかによく出てくる縦長で廊下に飛び出しているタイプだ。
「そういえば昨日、先生があの物置のことも話してたんだった…!自分の荷物はあの中に置いとけって」
「そういうことなら、早速教科書たちをおいてこようぜ」
「うん!」
俺とリュイのロッカー、まあこの世界でそう呼ぶかどうかはわからないが、はすぐ隣にあった。
隣り合わせで荷物を取ったり入れたりできるのも、結構ラッキー。
鞄の中から、革の表紙の本を数冊取り出して並べると、最後に鞄をロッカーの上のスペースに入れ込む。
「これはここ…でこれが…」
隣で戸惑っているリュイより早くまとまったので、少し手伝ってあげる。
しかし勉強道具が何もかも一緒だと、他の生徒に変な目で見られないだろうか…?
お揃いの筆記道具を見ながら俺は少し心配になった。
教室の中に入ると、すでに半分以上の生徒たちが席についていた。
俺たちは筆記用具だけを持って、昨日座った席に再び着席する。
「おはよう」
隣から声がしたので、顔を上げる。
「君は昨日の…」
視線の先には、昨日ノートを貸したオレンジ髪のショタ…いや、クラスメイトがいた。
オレンジ色の髪は今日もサラサラそうで、思わず手を伸ばして撫でたくなったし、白い肌の色は髪の毛とコントラストを成していた。
背筋をピンと伸ばして座っており、綺麗な顔立ちをしている。
オレンジ髪のクラスメイトはやがて立ち上がってこっちに近づいてきた。
「リオンくん、その子は…?」
俺の後ろからヒョコっと顔を出して、リュイもオレンジ髪のクラスメイトのことを発見する。
「そういえば昨日から自己紹介してなかったね…。クレモンティーヌ家三男、シエル・クレモンティーヌ。気軽にエルって呼んでほしいな〜」
シエル、と名乗ったそのオレンジ髪のクラスメイトは、綺麗な礼を俺たちの前で披露した。
クレモンティーヌ家…?この世界における貴族か何かだろうか…。
すると後ろでリュイがガタガタ震えていることに気づいた。
「リュイ…?どした…」
「クレモンティーヌ、、、ジュベナイルでも有名な中央貴族だよ!た、確かにオレンジの髪だ…なんで気づかなかったんだろ…。」
中央貴族…?なんだそりゃ。
「えへへ…。知ってくれてるのは嬉しいけど、そんなに怖がらないでほしいなぁ…。ところで君たちは?」
「オレはリオン・エトランゼ」
さっきの礼を軽く真似て、俺も頭を下げる。
「リュイ・エトワールです…!」
リュイはカチカチになったまま頭を90度に下ろしていた。
「リオンくんとリュイくん!二人ともよろしくね!」
整った顔がニコニコと笑う姿は、ショタコンにとってこれ以上尊いものはなかった。
お互いに挨拶したところで、授業が始まる前に席を少しだけ近づけて三人で話してみることになった。
「ちなみに、リュイくんはどうして僕の家のこと知っててくれてたの?」
「え、えっと…その、恐れ多き、なが…ら」
「敬語なんて大丈夫だってば!もう友達でしょ?気軽にエルって、呼んでほしいな〜」
リュイが思った以上に縮こまっていた理由は、リュイのお父さんが王室関係者だったからで、小さい頃に、貴族の名前を色々お父さんに聞いていたらしい。
だから貴族の名前を聞いたときには、礼儀をわきまえろと言いつけられているようだ。
「そんなことがなぁ…。リュイも意外としっかりしてるもんだ」
一人で勝手に感心していると、エルは俺に話しかけてきた。
「リオンくん、だよね?改めて昨日はありがとう!本当に助かったよ〜。」
「全然大丈夫だよ!むしろ仲良くなれてよかったって、安心してる」
そう言ったことを話していると、俺たちはすっかり打ち解けた。
数分もしないうちに、ほとんどの席が埋まっていき、そしてついに先生が現れ、クラスはシーンと静まりかえった。
続く




