聴覚過敏
他人が不快だと思う音と僕が不快だと思う音の違いはなんだろうか。
そんなことを僕は電車が到着するまでのホームの上で淡々と考えていた。
朝の通勤電車。いつも通り僕は9:11発の電車に乗り優先席の端へと迷いなく座る。
ここは僕がいつも座る席だ。僕は優先席の端っこしか座らない。それが特に悪いことだと思ったことはない。譲る時が来た時に必要な人に譲ればいいし健常者が座ってはいけないと言う決まりもない。
健常者が座らない理由とすればよく言えば障害者や老人への配慮、悪く言えば周りから向けられる軽蔑の眼差しってところだろう。
僕は電車の走行音が好きだ。自分の音を隠してくれている気がして安心する。
子供の泣き声は耳を覆いたくなるほど嫌いだ。あの泣き声を聞くたびに自分の中の不安も掻き立てられるから。
人の足音も嫌いだ。貧乏ゆすりも、ものが落ちる音も、ビニールが擦れる音さえも不快で仕方ない。
人の話し声も嫌いだ。ほら、そうやって僕を見るなよ。こっちを見るな。僕はお前らのそういう下品な笑い声が大嫌いだ。
なんで今のタイミングでそこの淵に足が当たったんだ。わざとだ。
みんなして僕を馬鹿にしている。
乗り換え地点に到着するアナウンスが流れた。僕は静かに立ち上がり彼らに言うんだ。
「うるせんだよ、死ね」
音なんて嫌いだ。それ以上に僕は僕自信が一番大嫌いだ。