4話
さて、生まれたばかりのヤドカリ君を見に行くか、といって一番近くのヤドカリ君を探した。
見つけたヤドカリ君は一言で言えばただの岩だった。高さは僕より少し高いくらいだから2mくらい?で直径2mくらいの円錐形をした岩だった。円錐形といってもまっすぐじゃなくて、ゴツゴツしてて、山のような形だ。
それほど大きいので、近くにいたヤドカリ君はスライム君らの遊具になっていた。スライム君が3匹ほどえっちらおっちらとよじ登っていて、ヤドカリ君は動じずにじっとしている。
みんなは実質僕の子供みたいなもんだし、その子らがわちゃわちゃしてる場面を見るとほっこりする。
さて、スライム君らには降りてもらってヤドカリ君の性能評価に参ります。
まずヤドカリ君に出てきてもらおうとしたけど背負っている岩もヤドカリ君の一部みたいで、出来ねーよ、みたいな雰囲気を出された。
前々から思ってたけど君らだいぶフランクだな。
まぁ、出来るだけ体を出してもらうと、その見た目はヤドカリっぽい形をした岩だった。なんだろう、雨風に晒されてエビとかの顔に見える岩に見える顔だ。ちょっとよくわかんない。
ただ、ちゃんと手はついてて、左の1番前の手が発達しているみたいだ。その手はトングのような形をしていた。
右手はフックのような形をして他の手に比べて長く、そのほかの足は歩く用らしい。
ついでに岩の生成をしてもらうと、どうやら自分の殻がモコモコと増殖し始めた。タンクとしての役割を望んでいたので、見るからに堅そうで嬉しい。
本題の岩投げはどうかと言えば流石の一言だった。どうやら自分で生成した岩は自分で切り離せるらしく、右手で岩を取ってから左手にパス。その後、とんでもないスピードで岩を投げた。
岩と言っても人の頭程度だが、それがおぞましい速さで飛んでくるのだ。
遠くにいるだけでうざいし、道を右に曲がったら急に真っ直ぐ出てくるとか怖すぎる。
敵として出てきたらと考えるとゾッとするが、ここは僕の迷宮。僕の味方なのだ。非常に頼もしい。
さてその命中精度を確かめるべく、試しに
いくつか岩をもらった。何をするのかといえば、僕の投げた岩に向かって岩を投げるというもの。
まぁ、信頼しているとはいえ、僕は怖いので迷宮の曲がり角から投げるが。
まずはおおよそ30mくらいで。野球のホームベースからマウンドまでの距離より10mちょい長い。
「いくよー」
合図を送ってから、全力で岩を放り投げた。すると、ヤドカリ君が投げたであろう岩が綺麗な放物線を描いて僕の投げた岩に衝突した。
いくらこっちが合図をしたからといって、一発で当ててきやがった。
二発目は何も言わずにぶん投げた。一発目よりかは反応が遅かったがそれでもしっかりと当ててきた。
三、四発目は無言にプラスして連続で投げた。三発目はきちんと命中させたが、四発目には何も飛んで来なかった。どうも、連射は厳しいらしい。
一応終わりであることを告げてヤドカリ君に会いにいく。
ヤドカリ君は四発目の件で少しいじけているのか、岩を生成してはすぐに装填。壁に向かって投げてから即撃つ、という練習を始めていた。
そういうとこ可愛いと思う。
さて、掃除役スライム君。近距離戦プラス集団戦、引き付け役の狼君。敵を惑わす落とし穴君。遠距離戦プラスタンク役ヤドカリ君。
まぁまぁバランスのいい奴らで固まったのではなかろうか。というかこれ以上は沼に嵌っていく気がするのでこれで第一階層の完成としたいと思う。
というわけで、これと同じやつをもう一個作ってこっちを白光側、新しく作った方を暗黒側に繋げてもらおう。まぁ、迷路自体は安いもんだしね。量が量だけに安くはないか……
この世界に来てから1年ほど?(ちょっとあの気絶していた期間はどれくらいか怪しい)が経ってから、第一階層が完成した。
よしよし白光暗黒両世界の入り口は完成した。この二つを第何階層で繋げるかが問題だ……あまりに浅いとすぐにつながってしまうし……
主従関係になったからかどうかはわからんが、どうも神さまは観察とかが楽しいらしい。多分僕にはいい感じの難易度調整を入れることを期待しているんだと思う。
だからこそどこで二つを繋げるかというのがわりと重要になってくる。とりあえず今のところはボス部屋っぽいところを作ってその一つ下のあたりで繋げようと思ってる。
最初の通路だし多分簡単に行ってしまうだろうから軍勢が通れるようなものにはしないつもり。
……うん、今後の予定も立ってきたね。
第二階層以降のことを考えながら第一階層に意識を向けてみると、どうやら魔物たちはわりと均等に生み出されるようだ。今の今まで気にもかけなかったし、狼君らは近くの奴らと集まることが多いからそういう点でも気が付きにくかった。
ヤドカリ君と落とし穴君が結構均等に分かれているのが気になって少し見てみると、ちゃんと均等に生み出されているみたい。そういえば、ここ最近はあまり魔物がポコポコ出てくるところを見ていないと思ったよ。
まぁ、だからといって何もないのだけれど、こういう日常の気づきって結構大事だと僕は思う。多分ね。