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1話


 飛ばされた場所は異常なまでに四角く、大きい石の部屋だった。とんでもない執念をもった職人が数十年をかけたかのように、どこもざらざらしたところがなく、しかしきちんと石の模様が残っていた。表面は磨かれていて、めっちゃ滑る。

 一辺は30mくらいはあるだろうか、それくらい大きい。天井も30mぐらいあるので開放感がすごいけど、いかんせん窓もないので圧迫感もすごい。なんというか……すごい矛盾があってすごい。


 まぁ、語彙力を無くしつつも自分に与えられた力の確認を行う。

 僕がもらった力は細かく見れば一つではあるが用途に分けると大まかに二つ。


 一つ目は物質創造の力。便宜上は創造と言っているけど要は空間を生み出す能力。この世界と世界の間にある「無」を使って壁なんかを作り出すもの。正直、何もないというものがある、という概念がいまいちピンとこないがそういうものらしい。

 そして。この壁は言ってしまえば世界と世界を分けるものなので非常に硬い。

 どのくらい頑丈かと言えば、神々が争わないと傷つかないぐらい……らしい。下界の者には壊せない代物だそうだ。


 二つ目は生物創造の力。こちらは世界とは反対の性質を持つ「虚」というものを使ってモンスターを作り出す能力。

 反対の性質を持つなんて大丈夫かと思うが、元々世界の調整に使われていたものなのである程度世界と親和性も高いらしい。


 これら虚無の力を使っていって生き延びることが僕の目的というわけだ。



 自分の力について考えていると、目の前にやけに豪華な金の装飾がなされた一冊の分厚い本が落ちてきた。そこには金の文字でルールブック、と書いてあった。

 見てみると中身は大してなく、そのほとんどが白紙であった。数少ない何かが書いてあるページには五つのことが書いてあった。


 一つ、この迷宮からでないこと!

 一つ、これから10年くらいは暗黒世界とも白光世界とも繋がないから、その間に準備をすること!

 一つ、作った迷宮に変更を加える時は、その空間に他の陣営の者がいなくならないとできないということ!

 一つ、迷宮は全ての入り口が繋がっていて、君のいる場所にも行けるということ!

 一つ、絶対死なないこと!


 流石の神とは言え、きちんとした配慮はあったらしい。二つ目が一番嬉しい。

 三、四つ目のルールは迷宮作りのルールっぽい。四つ目のルールによって僕は殺されるリスクがあるのか……

 五つ目は素直に嬉しかった。


 しかし、白紙のページは何に使えばいいのだろうか。こんなところでうんうん悩んでいても仕方がない……



 初めて空間を作ろうとした時、創造したのは大きい体育館ぐらいの石の部屋だった。創造したまでは良かった。

 しかし問題はその後で、あんまり疲れていないとは言えども、自分の中からナニカが抜けてく感じがした。このナニカによって一日に作れる迷宮の量を設定してあるのだろう。


 何はともあれ、最初にもらった石の部屋の横に繋げてみた。部屋と部屋の間は5mくらいの通路を設置した。

 通路を抜けたとしても相変わらず石の部屋なのでなんか変な感じだが、未だにこの開放感と閉塞感が同居する空間に違和感を覚える。


 寂しかったので、魔物も作ってみることにした。どんなものだろうかと思ったら、姿から習性から性格まで、おおよその枠組みは自分で設定できるらしい。

 やはり最初といえば!ということで、簡単そうなスライムを作ってみることにした。

 全体的に透明なぷるぷるとした楕円形の体。

 体内にある核を分裂させて増えること。

 分裂するための栄養の補給になんでも食べる。

 上記三つの感じをイメージすると体内からナニカがごっそり持ってかれる感じがした。体育館を作るのなんて比じゃないくらい。その癖して目の前に出てくるのかと思ったら出てこないし……なんて思っていたらそこらから少しずつスライムが形成され始めた。

 大きい部屋に十匹、最初の部屋は五匹出てきた。

 思ったよりポコポコと生えてきたのでビビったが、こいつらは僕が主人だと理解しているようでスリスリと擦り寄ってきた。

 正直気持ちよかったよね、うん。


 魔物は一匹一匹作るのではなく、種族全体を作るから、簡単なやつでも創造するのに大量のナニカ……もういいや、魔力で。魔力を大量に食うらしい。


 それにしても、どうも迷宮内であればどこも手にとるように分かるらしい。迷宮が大きくなった時に便利そうだ。


 ふむ、時間を稼ぐだけであれば迷路なんてのもいいのだろうが、それだと人海戦術でなんとかされそうだし……魔物と部屋を組み合わせ、なんとか両方からの侵略に耐えねばならんのか。

 しかし、本当に十年で足りるだろうか。常に二正面作戦を強いられているので、片方に約五年……向こうの文明次第ではすぐに攻略されかねない。


 本気でせねば、と決意を新たにした。


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