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魔女の薬

 ドラゴンゾンビを討伐し、疫病が蔓延していた村を聖なる薬で救った私の師匠【魔女】アルフィは一躍話題を掻っ攫い色々な所で薬を売ることになってしまった。


「アルフィ様...、だんだん私のリュックサックが大きくなっているんですが、これはどうにかならないのでしょうか?」


「それは無理な話ね、レイナ、そのリュックサックの中には私の大事な薬草達が入っているの、それを置いていくだなんてとんでもない」


「そう思うのならちょっとくらい持ってくれても良いのでは?」


「それでは修行にならないんでしょう?」


「...」


「...」


 悪い師匠にこき使われながら重たいリュックサックを背負い森林を抜けている可憐な少女は誰でしょう?


 そう、みなさんご存知の美少女エルフなレイナです。


 肌も髪も透き通る様な白さで男女問わず思わず目を止めてしまう美貌を持った私がこんなに大きいリュックサックを背負うのには理由がありました。


「ところでアルフィ様、今度の依頼では城下町に薬を売りにいくと言っていましたが大丈夫でしょうか?」


「そうね、今あの国は戦時中で薬が不足しているらしいから、薬だけ売ったら直ぐに街を出ましょう」


 そう、今から傷薬を売りにいく王国は絶賛隣国との戦争中なのだ。


 物資が不足している為かどんな物でも高額で買い取ってくれる。


 今噂の薬ならばなおさら高額で売れるだろうと踏んだ師匠が今回の依頼を請け負う事になったのだ。


 しかし「戦争などと言う愚かな人間の行事につきあう必要なんてありませんからね」と言っているので今回はアルフィ様の無駄な優しさが火種を産まない事を祈るばかりである。


 城壁で囲まれた物騒な城下町の門の前に立つと衛兵達が私達に槍を向けて来ました。


「貴様らは何者だ!?」


 明らかな敵意を持って接してくるので少しイラッとします。


 しかし、師匠であるアルフィ様は軽く会釈をすると自分の目的を告げました。


「私は【魔女】アルフィ、そしてこちらは弟子のレイナ、私達はこの国の依頼で傷薬を売りにきました」


 その言葉を聞いて衛兵達は顔を見合わせる。


「【魔女】アルフィといえば最近ドラゴンゾンビの暴れていた村からドラゴンを退け疫病が蔓延していた村を奇跡の薬で回復させたと聞く...」


「それにガリレア王が度重なる戦で疲弊した兵士達の傷を癒す為に偉大なる薬師を呼んだと言う噂もあったな...」


 噂に尾鰭がついていますがまあ良いでしょう。


 師匠が作っているのはただの薬草をすり潰したただの薬ですからね。


 奇跡の薬なんて物は存在しません。


 しかし師匠のネームバリューも強さを増したのか衛兵達はアルフィと言う名前を聞いた瞬間に態度を改めた。


「ようこそ! 【魔女】アルフィ様! 我ガリレア王国へ!」


 快く通してくれる事に感謝の笑みを浮かべる師匠の後に続く私。


「行くわよレイナ」


「は〜い」


 いつものノリで城下町を歩く私たちは早速依頼主の元へと向かいました。


 その依頼主とはもちろん...。


 〜ガリレア城・謁見の間〜


 私と師匠はガリレア王ので薬の効能を披露しました。


 傷ついた兵士たちの傷を瞬時に治してしまう奇跡の薬(ただの凄い傷薬)を王様に見せて良いように話を繋げる師匠の手腕は物凄い。


 ある事ない事をでっち上げながら、薬の価値よりも遥かに高い価格で大量に買い取ってくれるとガリレア王に約束させたのだ。


(うへぇ...、えげつない事しますねアルフィ様)


 どのくらい酷いのかと言うと、一つ辺りいつもの約3倍の値段で売りつけているのですから、原価を考えると相当な利益でした。


 それだけ切迫した国の状態だといえるのでしょうけど、それにしてもこのやり方は悪魔じみていますね...。


 王と握手を交わす師匠の姿が銭ゲバのように見えてなりません。


 しかも、アルフィ様の薬を大層気に入ったのか国お抱えの薬師としてしばらく滞在しないか? とまで聞かれていました。


 金銭的余裕の余ない私達にとってこの話は有意義な物と判断した師匠はしばらくの間この土地に滞在する事にするのでした。


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