美味しい料理を召し上がれ。 ~森の動物レストラン☆~
この作品はひだまり童話館・第28回企画《たぷたぷな話》参加作品です。
「ほい、ウサギさん! 2番テーブルにこの大盛りチャーハン運んで!」
「はい!」
「おーい、ウサギのウェイトレスさん。注文よろしく♪」
「はーい、ただいま行きます!」
賑やかなここは森の動物たちのレストラン。
名前は『おひさまたっぷりレストラン』なんです。
今日も今日とてレストランは大賑わい。
コック長のクマさんが美味しい料理を作るこのレストランは毎日が大人気!
時にはお洒落な扉の前に行列が出来ることもあるんです。
「ほい、ウサギさん。このそら豆のポタージュスープ運んでおくれ」
「は、はい!」
ウサギさんは緊張して返事をします。
何で緊張するんでしょうか。
それは……。
たぷたぷ。
「おっと、こ、こぼれそう! ゆっくり。ゆうっくり」
そら豆のポタージュスープはスープ皿にいっぱい盛ってあるんです。
お皿のふちから今にもこぼれそう!
たぷたぷ、音がするんです。
「もう、クマさんがスープを盛り過ぎなんだわ!」
ウサギさんはそろりそろりと3番テーブルのヤマアラシさんに、そら豆のポタージュスープをどうじか無事にこぼさずに運ぶことが出来ました。
「はあ~。よかった~」
それを見ていたヤマアラシさんもホッとしてスープを飲みます。
「ああ、美味しいなあ」
大満足なヤマアラシさんを見てウサギさんも嬉しくなりました。
「ウサギさーん! 次のお料理できてるよ~」
「はーい、今行きます!」
こうして、一番忙しいランチタイムが終わりました。
ウサギさんも美味しいまかないのお昼ご飯を食べました。
次の日も、レストランは大人気。
森の広場にある大きな花時計が、お昼の前の時間を示す頃から、動物たちがクマさんの美味しい料理を食べるためにワクワクしてやって来るのです。
「ウサギさん、今日のおすすめは何かな?」
口ひげが立派なヤギさんがウエイトレスのウサギさんに聞いています。
「今日のおすすめは、にんじんのポタージュスープとほうれん草のポタージュスープがおすすめなんですよ」
「ここのスープは絶品だからねえ~。迷うよいつも」
「あとはハンバーグもおすすめです!」
「迷うねえ~」
ヤギさんはおすすめのハンバーグとにんじんのポタージュスープを注文しました。
すると、厨房からクマさんの声がしました。
「ウサギさん、ハンバーグをこねるの手伝ってくれ」
「あれ? コック見習いのコグマさんは?」
「今日は風邪でお休みなんだよ」
クマさんは眉毛を「へ」の字にして困った様に言いました。
ウサギさんはきちんと手洗いをしてから、ハンバーグの種をこねこね。
こねこねしたのを、クマさんがフライパンでじゅわ~と焼き上げます。
そしてにんじんのポタージュスープも出来上がりました。
「クマさん、気をつけてね」
「ほいほい」
そう言っているウサギさんの側から、クマさんは深いスープ皿いっぱいににんじんのポタージュスープを盛ります。
たぷたぷ。
「ほい、ウサギさんよろしくね」
「はあ~い」
たぷたぷ。
「クマさん、ポタージュがたぷたぷしてる~!」
そおっと、そおっと。
ウサギさんはどうにかスープをヤギさんのテーブルに運びました。
「美味しいめえ~」
ヤギさんは大満足そうに料理を食べて帰りました。
それからも。
クマさんがスープ類をたぷたぷ、音がするほどに盛るのを止めません。ウサギさんがいくら大変だと言ってもです。
「クマさんがスープ類をたぷたぷ盛る理由?」
「そう。コグマさんが普通に盛るとクマさん、怒るじゃない。『もっと盛れ』って」
ある日の夕ご飯のまかないのこと。
ウサギさんは、困ってコグマさんに聞いてみました。
ウサギさんよりも前からコック見習いとして働いているコグマさんは「ああ」と何か思いついたかのようにうなずきました。
「ウサギさん。クマさんは"笑顔"がみたいんだ、みんなの」
「笑顔?」
「そう、笑顔」
コグマさんはまかないの大盛りトマトチーズがけうどんをつるるっとすすります。
「ウサギさん、このまかないも美味しいでしょう?」
「うん、とおっても美味しい!」
ウサギさんは笑顔です。
ウサギさんは何となくわかりました。
クマさんは、この笑顔のために、たくさん盛ってくれるのでしょう。
「たくさんだと、嬉しいもんね」
「そうそう」
コグマさんは「ごちそうさまでした」と手を合わせて立ち上がりました。
「明日も、団体のお客さんが予約してるよ。ウサギさん頑張ろうね」
「はい!」
「いらっしゃいませ! ご注文は何ですか?」
元気なウサギのウエイトレスさんが、お洒落な扉を開けると出迎えてくれる森の動物のレストランへ、あなたもようこそいらっしゃいませ。
〖おしまい〗
お読み下さり、本当にありがとうございます!
楽しんでいただけたでしょうか?