92 羽根
「えっ?羽根って出せるんですか?」
「いや私に妖精の血は入ってないので分かりませんが…」
背中に力を入れてみた!羽根なんて出なかった!残念!
「すみません、私は羽根の出し方すら覚えていないようです…」
「オーナルの王族は、基本的に飛んで生活しているそうです。記憶を失ってから今まで、飛べないのは大変だったのでは」
「…そうでした…本当に大変でした…」
脚はもつれやすいし、立ってるだけでも辛かったし、歩いただけで胸が揺れるし…。
あ、服が全部、ノースリーブで背中を見せるようになってるのは、羽根を出すためなのか…。おかげで、不安定で、すぐポロリしそうで…。
「でも、羽根を出せないんですよね。これからも大変ですね…」
私、歩く生き物じゃないんだ。飛んでもいいんだ。
「羽根がなくても、魔法で飛べばいいですね」
私は念動で浮かび上がった。
「なるほど。そういえば、妖精は魔法で浮かび上がり、羽根で羽ばたいて移動すると聞きました。しかも、自分を浮かび上がらせるのには、魔力を消費しないそうです」
「そうですよね。どんな羽根か知らないですが、人間大のものを浮かせようと思ったら、ハチドリみたいに、めちゃくちゃ高速で羽ばたかないといけないですね。でも私は浮くのも移動も魔法でできます」
「でもそれだと移動の魔力の消費が激しそうですね。め、メリディ王女殿下は、最高の魔力の持ち主でしたね」
「ふふふ、私これから、ふよふよ浮かんで生活します」
「そ、それがよいですね…。オーナル王家は、人間というより、大きめの妖精という印象が強いですし」
「あと、いちいち王女殿下って長ったらしいので、メリディでいいです」
「そ、それではメリディ様とお呼びします…」
「そういえば、妖精って十五センチなんですよね?どうやって人間と交配するんですか…」
「最初は、妖精は父親になることしかできないそうです。子は、両親の平均的な大きさになるので、大きさが近くなると、母親が多少、小さくてもいいそうです」
なるほど…大きさだけの問題なんですね…。
「ああ、だから私、小さいんですね…やっと謎が解けました。私、子供も産んだのに、なんで十歳程度の大きさしかないのか、ずっと不思議でした…。それでずっと子供に間違われていました…」
「オプテイシアでは、オーナル王家の方が小さいのは皆知っているはずです。今までどちらにいらしたんですか?」
「インテラスです」
「そうでしたか。それなら知らなくても無理はありません」
「あ、私、エルフも混ざってるんでしたっけ。エルフって長寿命でしたよね」
「はい、エルフの成長速度は人間の十倍程度で六百年から七百年と言われています。妖精はその半分くらいだそうです。ただ、妖精は最初の数年だけ早く成長し、七十年くらいかけて成人すると、あとは老いることなく、三百年くらいで寿命を終えるそうです。」
「あれ、じゃあ私の成長速度とか寿命って…計算は分からないですね…」
「オーナルの王族は人間の三倍程度の寿命だそうです。計算は分かりませんが…」
「エルフと妖精が九割なのに、案外たいしたことない…まあ、そんなに長生きしなくていいですけど。あ、三倍ってことは、今私何歳なんでしょう…」
「メリディ様成人のパーティは…三年前に開かれました。そう、私が五歳の時にメリディ様誕生の噂が流れたと、父から聞きました。だから五三歳のはずです」
「五十で成人…。そして私、五三歳…。人間換算だと十七歳くらいか…」
背丈は十歳、人間換算肉体年齢は十七歳、実肉体年齢は五三歳、でも頭脳は!ってそれはもういいから、なんで私を表す年齢の数値が四種類もあるんだよ!




