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ママは育児休暇につき世界を救わない  作者: はぴぴ
1章 ママは自分を救えない
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9 時速八十八マイル

 STIは離陸した。さすが、ジェット飛行機並の加速。しかし、離陸後に加速することはできなかった。しかもSTIには小さな羽がついているものの、それで得られるのはダウンフォースである。

 いや、そうじゃなくって。たんに地面がなくなったから落ちてるだけだよ。


 私たちを高速道路ごと切り取って、違う世界に貼り付けたような、この状況。どこまでも高速道路が続いてないことは、なんとなく予想してた。だから落ち着いている。


 高速道路が途切れたその下は荒野だ。十メートルくらいの高さなら、STIの剛性で耐えられるはず。…でも念のため、念動でSTI全体を…浮いた!一・五トン、持ち上げられたよ!

 仮にできなかったとしても、落下速度が上がる前に、地面に瞬間移動しようと考えていた。行き当たりばったりだけど、安全策は考えてあったよ。子どもを危険にさらせないしね。

 さようなら、騎兵さんたち。一・五トンを持ち上げる力が何馬力か知らないけど、やはり騎兵五十機なんて目じゃないね。


「何これ?飛んでるー?」

「ママの車、魔法で飛べるようになったよ!」

「しゅごいしゅごい!」


 さて、そのまま飛んで行くと悪目立ちしそうなので、結局、瞬間移動でできるだけ遠くに行こう。あっ、車の質量で瞬間移動は試したことなかったね…。やっぱりこの作戦は綱渡りだった…。私のやることは、いつもこんな感じだ。できたら、できたなり。できなかったら、できなかったなり。でもできたからいいんだよ。


 視界内の数百メートル先を目標値点としてSTIとその中身を瞬間移動。うん、景色はあまり変わらないけど、サイドミラーに映る高速道路の切れ端は小さくなった。時速八十八マイルでないと瞬間移動できないなんてことはなかった。生ゴミの燃料も不要。さっさと騎兵の視界から消えたいので、ワープ航法を繰り返した。



 いやぁ、結局エンジンのキックスターティングも、難しいペダル操作も、何も必要なかった。ガソリンがもったいないから、エンジンを切ってしまおう。エンジンを切っても落下しないよ。私が車を持ってるのだから。外気温の表示は二十五度だ。暑くも寒くもない。ざーざー言うラジオもうるさい。ずっと東北道で止まったままのナビもいらない。

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