87 旅立ち
神父さんは、重そうな口を開いた。
「オプテイシアは、謎の災害が起こって、大混乱らしいのです」
「えっ、あー…、それは噂で聞きました」
「それで、オプテイシアの港町が崩壊しているんだそうで…」
それは見てきました。
「船が出ていないんです」
船は使いません!とは言えない?いやもう、どこに瞬間移動してもいいよね?ダメ?
「あ、えっと、お金をたくさん払っても、船を出してもらえませんかね」
「それはできるかもしれませんが…」
「なら問題ないです」
「美奈子、あなたどんだけ稼いだのよ。最近この辺の森で、獣を見かけなくなったのよ」
「あはは」
反省はしていない。繁殖できるくらいは残した。
物置部屋に忘れ物がないか確認しにいった。基本的にアイテムボックスに入れちゃうから、何もなかった。
物置部屋を出ようとおもったら、出口にスローがいた。
「なあ、本当に行かなきゃダメなのか」
「うん、私のことを知りたくて」
スローはいきなり私に抱きついてきた。
「ずっとこうしていられると思ったのに…」
「ごめんね、私、嘘ついた。悪いママだね…」
「いや、ママではなくて…」
「落ち着いたら、またここに来るからさ。もう会えないわけじゃないよ」
「…」
「…ねえちょっと疲れたから、座ってもいいかな…」
「ご、ごめん…。でももうちょっとだけ…」
「…ねえ、また来るんだから、もうそろそろね?」
まだ十二歳だもんね。孤児だから母親を知らないのかもしれない。そして、一度知ってしまった母のぬくもりは手放せないかな。でも座ってるとはいえ、一時間もこの体勢で、もう身体が痛いんだけど…。
「ってあれ?スロー寝ちゃった?」
スローは頬を濡らして、目をつぶっていた。うう、眠ってるのに、私の力では腕を振り払えない。
瞬間移動で抜けると、スローがバランスを崩して、起きてしまいそう。その辺にあった毛布を、念動でくるくる丸めて、私の身体と瞬間置換!おお、これって身代わりの術っぽい!
ごめんね、さよならは言わないで行くよ。
あ、そうだ。私が稼いだお金の半分、金貨五十枚、渡しておくよ。
「準備ができました」
「本当に行くんですか。オプテイシアは国が崩壊しているとの噂を、先ほど聞いてしまいまして…」
「そ、それでも行かなければならないんです」
「分かりました。帰る家がなかったときは、いつでも歓迎しますよ。こんなところ良ければですが…」
「ありがとうございます。ここは私の大切な故郷の一つですから、こんなところ、ではありません。大事な家族の住む家です」
「そうですか…本当にお気をつけて…」
「はいっ!それじゃ、出発します」
「またねー」
「ばいばーい」
さっぱりしてる、うちの子ら。ばぁばんちの帰りも、こんなもの。
「ゆうき、あいか、美奈子、ばいばい。また来てね」
「あいかとゆうき、さくらもばいばい」
コンデとインダスも、理解してないのか、意外にあっさり。
「あの馬鹿はどこに行ったのかしら。まあいいわ。気をつけて行ってね。美奈子はきれいだし狙われやすいんだから」
「あはは…」
私たちは教会をあとにした。




