80 男子の願い
俺はスロー。十二歳。
昨日、美奈子はランク2昇進記念とか言って、狩りで大魔法を連発してた。ここまで大暴れしたのは初めてだったけど、こういうときは疲れてしまって、赤ん坊のさくらと物置部屋にこもって、そのまま朝まで起きてこない。
美奈子が物置部屋にこもったときは、入ってはいけないと、神父さんに言われた。いったい何をやっているのだろう。
今日も朝になれば顔を出すだろうと思ってた。なかなか出てこなかったけど、昨日はかなり疲れたはずだから、朝寝坊してるくらいに思ってた。みんなそう思ってた。
ところが、俺が昼メシに戻ったときも、まだ起きてないようだった。俺は神父さんに見に行ってもいいかと聞いたら、神父さんはあいかに見に行ってもらうって。あいかは美奈子と一緒に来た子だけど、なぜあいかなんだ?
「ママ、いなかった。さくら、いた。ママぁどこぉ?うわああーん、ママぁー」
ゆうきとあいかは美奈子のことをママと呼ぶ。住んでた村で、親代わりに育ててもらってたのかな。さくらは美奈子と似ている気がするけど、本当の姉妹かな。いや、獣人だし、よく分からないな…。
まあそんなことは今はいいんだ。美奈子がいないって?きっとさらわれたんだ。くそっ、俺はまた、あいつを危ない目に遭わせてしまった。
俺は町や、いつも狩りに行く森を駆け回った。でも、どこにも美奈子はいない。もう町にはとっくにいないんだ。
神父さんは、ハンターギルドに捜索依頼を出しに行ったそうだ。俺は美奈子を見つけるハンターにはなれなかった。町から出て、一人で美奈子を探しに行く力なんて俺にはない。俺は無力だ。
途方に暮れつつ、教会に戻った。コネットも探し回ってたらしい。
はぁ…。晩飯のあと、いつもは入ってはいけないと言われている、物置部屋。そこにはさくらの寝ている篭があった。
「おまえは美奈子に似てかわいいなあ。なあ、おまえの姉ちゃんは、どこに行ったのか。おまえは見てなかったか?」
ああ、無事に帰ってきてほしい。さくらに話しかけながら、うとうととしていた。ああ、美奈子はいつも、こんな風にしているのか。
そんなことを考えていたら突然、目の前が真っ白になった。そして、俺は柔らかいものに包まれた。
ああ、俺はこの感覚を知っている。このぬくもりが、再び俺のもとに戻ってきた!




