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ママは育児休暇につき世界を救わない  作者: はぴぴ
2章 ママは普通に暮らしたい
75/551

75 脱出 一

 私はたった今、目を覚ました振りをした。そして、男の顔を蹴りつけた。


「おい、おまえがうるさいから、目を覚ましちまったぞ」

「ちっ。おとなしくしろ。今日は俺が遊んでやる」


 男は全く痛がる様子はない。クラッチも踏み込めない私の脚力じゃあね…。まあ予想の範囲内。もうアジトに着いたみたいだし、さっさと始末しちゃおう。落ち着いて次に手に。


 私は無言でファイヤボールを出して、男の顔に押し当てた。


「あぢぃー。クソガキがっ!」


 男は私を地面に投げ飛ばそうとした。しかし、私は今、十キログラム重以下の重さだけど、質量は二十九キロのままなのだ。だからそう簡単に投げ飛ばせるわけない…ことはなかった…。

 私は宙を舞い、建物の壁に打ち付けられた。痛いっ!私のひ弱な身体は耐えられず、私は意識を手放した。



 次に目を覚ました場所は、簡素な収容施設。うぅ、痛い…。…それ以上のことはされなかったみたい…。

 とりあえず、打ったところに無言でヒール。透視で中に潜ってまで治す必要はなかった。

 もうおうちに帰りたい。奴隷商人を捕まえてやろうなんて、大それたことを考えてたけど、私にヒーローごっこは無理だ…。他人のことなんて知ったこっちゃない…。私は自分と自分の子供で精一杯なんだよ。

 …と思ったら…、私の他に、十歳くらいの女の子が二人、捕まっていた。うぅ、さすがに見捨てて帰れないじゃんよ。


「あなたたちも捕まったんだね。ここから出られたら、帰り道は分かる?」

「馬車に閉じ込められて来たから、分からないの」

「私は町から出たことないから…」


 うー、自分の帰り道も分からないのに、この子たちを連れて帰るとか、面倒すぎる。


「おっ、起きたか?今日はもう一組連れてきたら終わりだから、そのあとで遊んでやるぜ」

「ひっ…」


 恐ろしくなって、とっさに…、イノシシのときのことを思い出して、思いとどまった。んー、痛めつけるのも性に合わないし、ハンターギルドとかに突き出す?もう考えるのも面倒。思考停止。時間停止。そうだ!

 私は商人風の奴隷商人を、アイテムボックスに瞬間移動させた。これなら対処を保留にしても、飢えで死ぬこともない。私、考えるのを保留にするの得意だよ。捨てるべきか悩む時間があるなら、五年くらい放っておいて、もう使わないって思ったら捨てるんだ。それを可能にする、アイテムボックス。たいてい五年もたったら、埃びて、もういらないってなるものだけど、これなら五年後も劣化することなく、今のまま。

 ああ、なんて素晴らしい。死なせることもなく、敵を無力化できる手段。

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