74 誘拐
この世界の魔法は誰もが持っている手足。超能力も同じ。眠っていたり、意識がなければ、手足は役に立たない。
この世界には、自動化された物がほとんどない。電気がないのはもちろん、魔法の機械みたいな物もない。魔法を使って製作して、飲んだときに効果を発揮するような、魔法の薬もない。
あとは、この町しか知らないけど、水車や風車もゼンマイもない。魔法は関係ないけど。
人の意志が働かなければ、魔法は何もしてくれない。でも私は生きていて、意志を持っている。だから、私はなんとかなるはず。あ、でも薬漬けとかは、やめてください。洗脳魔法みたいなのもないはず…。
そんなわけで、私は手足を縛られて、馬車の中で揺られている。私をさらったやつがどんなやつか、透視で様子を見てみよう。
御者台には御者と商人風の男。いかにも悪党!という感じではない。
いかにも商人!って感じの人も知らないけどね。服屋以外は、市場も行ったことなかった。帰ったら行ってみよう。
おっと、帰ったときのことを考えるには、まだ早かった。
ここはどこかなあ。町どっちかな。ああ、住んでる町の名前も知らないや。私はナビがないと、どこにもいけないんだよ。あああ、帰り道分かるかな。いや、風景を思い出せば、瞬間移動でいけるかな。
じゃあ、このまま連れて行かれてみよう。もしかしたら、他にも捉えられてる子がいるかもしれない。
「狙ってた上玉が、やっと手に入ったぜ」
「ああ、こいつはどこかの貴族の娘に違いねえ」
「高くうれるぜ、これは」
透聴から会話が聞こえてきた。いかにも奴隷商人!って感じの会話、ありがとうございます。
馬車が止まった。揺れたり跳ねたりで、いい加減疲れたよ。
私は目を眠ったふりを続けた。透視で見えるし。
「猿ぐつわが外れてるぞ。結び方が足りなかったんじゃないか」
「すまねえ」
それだけは耐えられなかったんだよ。なんだか臭いし、明らかにばっちいし…。うう、また猿ぐつわをされちゃったよ…。雑菌と匂いの元、飛んでゆけ!
商人風男は私をひょいと抱えた。しまった!寝ている間はともかく、起きたらすぐ重力軽減と手ブラを起動するのが癖になってて…。
「なんかすごく軽いな」
「十歳くらいの娘なんて、大して重くないだろ」
「積んだときより軽くなったような気がしたんだ。それにしても、こいつは本当に十歳のガキなのか?」
「ああ、売っちまう前に、ちょっと遊んでも良いな」
えっ?ちょっとまって!私は十歳の幼女。それはダメだよ…。殺されなければなんとかなるとか思ってたなんて、愚かだった…。




