66 男子の葛藤
俺の名はスロー。十二歳、男。
今日も美奈子は仕事には行かない。でも町に出かけるようだ。よかった。少しは元気がでたかな。コネットと話していたけど、コネットは一緒には行かないらしい。
またこの前みたいに、こっそりついていてやろうかな。と思ったけど、町中だから大丈夫だろう。今日は俺は仕事に行こう。
仕事を終えて帰ってきたのだけど、美奈子の姿がない。昼メシにも帰ってこなかったし。よし、探しに行こう。
「ただいまー」
よかった。心配したんだ。
服を買いに行ってたのか。そうだよなぁ。その服は…ダサい。美奈子の魅力が台無しだ。
「これ、みんなの分なんだ」
はぁ?まず自分の服をどうにかしてくれよ!こうなったら、俺が明日買ってこよう。服屋には貴族の使い古しがあったのを覚えてる。あれなら美奈子に似合うはずだ。今までの稼ぎを全部、はたくことになっても手に入れる。
ん、俺の分もあるのか?俺も着替えろってか。ってコネット、ここで着替えるのかよ。俺が出ていくしかないじゃんか。インダスはここにいていいのかよ。コネットも女っぽくなってきたとはいえ、コネットの着替えを見ることができても羨ましくはないけどな。
美奈子がくれた服。これは高そうな服だな。服なんて、どうでもいいと思ってたけど、俺がこれを着て、ドレスの美奈子と並んだら…。そう考えたら、こういう服も悪くないものだな。
早くしてくれないかな。コネットとか子供の着替えなんて、十秒あれば良いだろ。
「もういいわよ~」
……そこで俺が出会ったのは、女神だった。…いや、女神のように美しい姿をした美奈子だった。なんで美奈子まで綺麗な服を着てるんだ。自分の分は買ってないんじゃなかったのか。
美奈子が着ているのは、紫色で飾り気は少ないものの、落ち着いた雰囲気で、品のある服。スカートの膨らみこそないけど、これはドレスだ。
大きく露出した肩の下から…飛び出しそうな…、む、むむむ、むね…。くびれたウェスト。素肌や身体のラインをアピールしてる。
そして、下ろした髪。いや、髪に隠れて気がつかなかったけど、背中が丸見えじゃないか。
もともと大人びた顔をしていると思ってはいたけど、今日はドレスの効果も相まって、まるで大人の女性だ。
彼女は完全に貴族のお嬢様だ。俺なんか相応しくない。彼女は高価な服を選んでくれたけど、これじゃ馬子にも衣装だ。並んで歩くことはできない。悔しい、俺はただのガキだ。




