65 プレゼント 一
服屋を二回も物色したり、ドレスを着たり脱いだりしてたら、すっかり夕方だ。昼食も忘れてた。いや、昼食はいらないんだった。もう、昼食にみんな私がいなくても文句は言わない。
あ、さくら…帰ったらすぐ授乳しなきゃ。ダメじゃん、自分が食べないからって…。私は赤ちゃんの母親。忘れちゃダメ…。だって、妊娠期間を過ごしてないんだよ。何時間にもわたるお産もなかったんだよ。なんだかまだ実感が薄いんだ。
早く大きくなってほしいのに、こんなことでは…。ごめんね、さくら。
夕食の準備は手伝うけど、夕食の席には参加しないから、みんな食べ終わったのを見計らって、しれっと夕食の片付けに参加。
「あら美奈子。晩ご飯は…食べないんだったわね。今日はどんな服を買ってきたの?」
「ふふふっ、みんな集まって!」
「美奈子ったら…、みんなを集めてまで自慢するなんて…ちょっと意外…」
「オープンストレージ!じゃーん」
「うわぁ、服がいっぱいだわ!」
コンデが食いついた。男の子は、それほど興味なさそう。ゆうきも。あいかはおもちゃのドレスは好きだけど、普通の服は適当。あっ、あいかに好きなドレスを買ってやらないで、自分は高価なドレスって、酷い親だな…。まあ、華々しいドレスじゃないから、勘弁してほしい。
「どうしたの、こんなにたくさん…」
「これ、みんなの分なんだ」
「うそっ!これ着ていいの?」
「そうだよ、プレゼント!」
「わーい」
子供部屋は女子更衣室になりつつあったからか、スローは服を持って無言で出て行った。インダスとゆうきは気にしてない様子。
コンデは嬉しそうに袖を通してる。インダスも自分で着られそうだ。自分で着られないのは、うちの子らだけ。まあ、日本の服ではないし。
「ママぁ、こんな服いらないよぉ」
「私はいちゅものでいいの」
「お出かけするときだけ着てくれればいいよ。シャツじゃお出かけできないから」
「「えー、じゃあお出かけしなーい」」
「これ、凄くか可愛いわ…。裕福な娘しかこんなの着られないもの。ホントにこんなのもらってもいいのかしら」
「もちろんっ」
「ありがとう!それで美奈子は、自分の分はどうしたのよ。まさか、自分の分を買ってないとか言わないわよね」
「私のはこれ。オープンストレージ!」
「これはまた…凄いのを買ったわね…」
「これしかサイズが合わなくて…」
「そ、そう…。たしか、あの店には貴族様の使い古しが置いてあったけど、こんなのもあったのね」
「そ、そそそ、そうなんだよ」
「ふーん。でも、これだけの服…いくらかかったのよ」
「ぜ、全部で大銀貨九枚だよ。」
「イノシシのお金、ほとんどじゃない!」
「あはは…」
「十五歳になったら、ここを出るんだから、貯めておかなきゃダメよ!」
「だって、みんなに良くしてもらってるから、お返ししたくて」
だって、私だけドレスじゃ目立つから、などとは言えない。
「はあ…、家族なんだから、そういうのはいいって」
「ふふふっ」
笑ってごまかすしかなかった。
私もドレスを着始めた。コネットとコンデとが、私をじろじろと見ている。高価なドレスが珍しいのは分かるけど、だからといって、そんなに見つめられると…。
「きれーい!ホントのお嬢様みたいねー!」
「このドレスがここまで似合うとはね…。しかも、凄く大人っぽいわ。私より年下なのに…。あなた、記憶がないって言っていたけど、貴族のお嬢様だったのよ、きっと」
大きさは子供、肉体年齢は成人、頭脳はおばさん、その名は、転生者っ美奈子!
とんとん…。ドアのノックの音。
「おい、もう入っても良いか?」
「もういいわよ~」
「……」




