6 ヘタな言い訳
かれこれ一時間ほどどたばたしていた。いい加減疲れたから、運転席で休みながら今後のことを考えていた。そしたら、やっとゆうきが起きた。あぁっ、しまった。なんて説明しよう。
「誰…?」
当然そうなるよね。ってか私が知りたいよ。でもごまかすの多分無理だ…。幸い美奈子はアイテムボックスに隠したし、殺人犯ルートは回避した。
「ママだよ」
「えっ?」
「ママはね、魔法でプリンセスに変身したの」
「じゃあ魔法見せてよ!」
えっ、それは困る。魔法っぽい能力は下手くそなんだけど…。誰だよ、使えもしないのに魔法なんて言ったやつ。ってか、ママのこと気にならないの?姿も声も似ても似つかないのに。食いつくところ、魔法の方なの…?そうだ、魔法と言えばあれがあった。
「車から降りてこっちにおいで」
手を振りかざして。周辺の大気を絶対零度にして。魔法の呪文は…
「近寄らないで!」
思ってたんとちょっと違うけど、氷の柱ができた。
「ママすごい!」
「あっ、プリンセしゅだ!えっ?ママなの?」
あれ?あいかも起きてたのか。パフォーマンスが一回で済んでよかったよ。あいかは四歳だけど、まだ舌足らず。でもプリンセスに憧れる四歳児。呪文とパフォーマンスはこれでいいはず…。
「あいか、起きてたの?ママね、魔法でプリンセスに変身しちゃって…。」
「ママかわいい!魔法の力、しゅごい!」
いや君たち、ママの姿が変わり果ててしまったのに、なんでそんなにポジティブでいられるの?
「ママ、他に魔法ないの?」
うーん。さっきアイテムボックスにしまったお菓子を手のひらからパラパラと出してみた。
「ほら、どう?」
「わーい!ママすごいね!本当に魔法のプリンセスだ!」
お菓子をくれる悪い魔女に騙される私の子供たち。長生きできない…。
「ねえママ、いつまでプリンセスなの?」
「ママね、呪いにかかっちゃって、自分では元に戻れないの」
「へー、まあこっちのが若くてきれいだから良いね」
いや、その通りなんだけどさ、ママ悲しいよ。一年生になってクラスの子のママと比べだしたんだよ。だからといって、この姿を友達に自慢されても困るよ。