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ママは育児休暇につき世界を救わない  作者: はぴぴ
2章 ママは普通に暮らしたい
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57 トラウマ 一

 膝枕の上のスローの顔は、胸に遮られて見えない。でも起きたみたい?スローはまだ意識がはっきりしないのか、もそもそ動いてはいるけど、起き上がる様子はない。もう少しゆっくりさせてあげよう。



 でも……、スローは、いっこうに起き上がらない。


「スロー?目を覚ましてるの?」

「…はっ、雲の世界で天使の声が聞こえる。やっぱりここは天の国なんだ」


「…何言ってるの?スロー」

「あれっ、美奈子なのか?どこにいるんだ。雲に遮られて、何も見えないんだ」


 私は、視界を妨げている胸を、身体をよじってどけた。なんだか緩んだ顔のスローが現れた。


「うゎ、美奈子!無事で良かった」

「起きられる?」

「ああ。よっとっ。ここは森…俺は今までどこに寝ていた…?まさか…膝…じゃあ顔のは…、む、む、む、…ああああ」


 スローは暴れ出した。


「元気みたいね、よかった」

「あ、ああ。痛いところはない。あれ…、骨折れたはず…」

「そ、そそそ、そんなことなかったよ。け、今朝勉強したヒールで治ったんだよ」

「ヒールで…?どおりで傷一つない…。あれ?ヒールで骨?まあいいか。ヒール使えるようになったんだな。よかったな」

「うん、ありがとう」


「イノシシは?」

「あっち」

「ああ、でも…傷が一つもない、どうやって倒したんだ?…あれ?焦げたあとも…?」


 うう、余計なことを…さっきのイノシシを思い出したら、気持ち悪く…。


「うっ…」

「おい、どうしたんだ、こいつにどこかやられたのか?」

「大丈夫、痛いところはないよ…少し気分が…」

「無理はするなよ」

「うん…」


「なあ、もう一人で行くなんて言うなよ」

「うん…一緒に来てくれてありがとう」

「…」


「今日は早いけどイノシシ一匹だけで帰る」

「そうしよう」



 私はストレージゲートを出して、ゲートに手を添えるようなパフォーマンスもなく、イノシシの上からゲートをかぶせて、ゲートを閉じた。終始、無詠唱。魔法が届く距離も無視。スローは何か言いたそうだったけど、気を配る余裕なし。


 ちなみに、屋敷のあったストレージは、物を入れるというより、自分が入るためのものだったので、一瞬でもそこに血なまぐさい物を入れるのは気が引けてきた。だから、屋敷のストレージとは別の空間を新しくクリエイトした。たぶん総容積が魔力依存なだけで、分割は自由らしい。総容積はそもそも分からないけど…。



 しかし…。今日は獲物を二十匹くらい持って帰るつもりだったのに…。少なくとも、今日はもう獣は見たくない。明日はマシになってると良いんだけど。でないと、別の金策を考えなければならない。

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