39 野草採集
「あっ、こっちにあるよ」
べつに私は普段から敬語を使ってるわけじゃなくて、自分の方が年下…という設定だから、そうしてただけだ。不要と言われれば、間違えて使うことはない。
「お、おう…よく見てるな…」
上から透視して発見した方へ向かう。自分からの視点で見えるはずがない。
スローから借りた袋は、あっという間にいっぱいになった。二十本はとれたかな。スローはストレージに五本だ。一五センチの箱とかだと、それくらいが限界かも。
「袋はそろそろいっぱいだから、ストレージに移してみる。」
「おう魔力が足りなくなってきたら、やめるんだぞ」
「うん、オープン!」
あっ、精霊とかストレージとか入れるの忘れた。それでもゲートは開いた。
「おい呪文が違うぞ。…まあできたから良いか…」
呪文適当で良いみたい。神の像とかも適当感が漂うし、形とか文言とか、神や精霊は気にしないとか?
私のストレージは、二十メートルの深さに、何やら中に屋敷があって、入れ物というにはかけ離れている。物を入れたら、二十メートルの奈落に落っこちてしまうので、物を入れたら落下する間にアイテムボックスに移すことにした。
「ほくほくだね。そろそろいっぱいだと思うけど、いつまでやれば?」
「コネットねぇは、さっきの場所で待ってれば、そのうち戻ってくるさ」
「ふーん…」
元の道を歩いて戻る。その途中、上から見下ろしている透視の視界に、接近する何かの姿が。イノシシかな。こっちに向かってくる。草むらがガサゴソいった瞬間、それは姿を現した。スローは音が気がついて振り向いたときにはもう、距離はわずか。
「危ない!」
私はスローを突き飛ばして、自分も跳んで避けた。…ように見せかけて、念動でスローと自分を移動させた。赤ん坊を五分と抱えられず、自分の体重を三分の一にしてやっと歩けるような私に、そんなことできるわけないじゃん。
回避は難なくできた。上から視点だからタイミングも計りやすいし、自分の力で動いてるわけでもないから、まるでゲームのキャラを操作しているようだった。ピンク髪ってのもゲームキャラにしか見えないしね。
さてこのイノシシ、どう料理してくれようか?




