29 神聖魔法
「すみません、怪我を治療する魔法はないですか?」
「ありますよ。それは神聖魔法といいます。怪我をしているんですか?」
後ろに隠している左手をつかまれ、やけどを見られた。
「村を襲った族は火を放ったんですかね。こちらにいらしてください。」
なんでやけどがばれたんだ。こっそり火の玉を出したのもばれてるんじゃ…。
頭にターバンを巻いた石像の前に連れてこられた。
「こちらは癒やしの神の像です。癒やしの神に祈りを捧げ、傷を治してほしいと願います。それでは、私がやってみますね。癒やしの神よ、傷を癒やしたまえ、ヒール!」
神父のペンタムさんは、つかんでいる私の左手のやけどをにらんで、呪文を唱えた。すると、みるみるうちに赤みが治り、痛みが引いていった。感激だよ!
「神聖魔法、すごいです!痛みが引きました」
「よかったですね。ひどい傷や病気はあまり治せないので、無茶をしないよう気をつけてくださいね。ところで、このまま魔法のお勉強の時間としても良いですが、おなかはすいてないですか?」
しまった、何も食べてない設定だった。ゆうきはお菓子を食べてしまったし、あいかはミルクを飲んでしまったし。さくらは…どこで授乳しよう…。
そして、私も女神になってからペットボトルのお茶しか飲んでないんだけど、なんだかおなかがすかないんだよねぇ。前もこんなんだったかなぁ。
でもしょうがない。いただいておくか…。
「あ、はい。ごちそうになります…」
「それなら。コンデとインダスは食事の準備を手伝ってくれるかい」
「「はーい」」
孤児院の食堂の部屋には、やや高めのテーブルが置いてあった。私とゆうきとあいかは、レストランにあるような、子供用の肘掛けの付いた背の高い椅子に座るように促された。私は子供じゃないんだけど…、と思ったけど、今の私の身長はコンデやゆうきと大差ない。ああ、このテーブルが高いんじゃなくて、私が小さいのか。
仕方なく子供用の椅子に座るのだけど、肘掛けの幅がちょっと狭くて…。私はボンっキュっボンっで足がかなり長めなので、下半身だけ見ればそれなりに大人。大人のお尻は子供用の椅子になかなかはまってくれなかったけど、無理矢理押し込んだ。
椅子に座ると、テーブルの上に置かれたのは、私の二つのメロン。これ、食事をするのに邪魔だなあ。お皿を遠くに置かないといけないし、手を伸ばさないとものが取れないし。ホント、女神様は今までどうやって生きてきたんだろう。このままずっと食べなくても、おなかがすかないのかな。それとも、誰かに食べさせてもらってたのかな。
コンデとインダスがパンとサラダを運んできてくれた。たんぱく質がないけど量は十分だ。
「こんなにいただいていいのでしょうか」
「遠慮しなくて大丈夫ですよ。国から補助金が出ています」
「それならいただきます」
「ママぁ、野菜いらない」
「私もあげりゅ」
「はいはい」
おなかはすいてなかったけど、野菜なら食べられそうだ。
「ママぁ、食べないならパンちょーだい」
「いいよ。あいかはいらないかな?」
「いらなーい」




