109 脱出準備完了
二週間、つまり十日経って、再び仕立屋がやってきた。あれ、なんだかんだ、一ヶ月近く居座ってるような…。
「ママかわいい!」
「私も着たーい」
「あいかは、こういうゴテゴテしたのは、すぐ脱いじゃうでしょう」
「メリディ様…か、かわいいです…。」
「この世で唯一咲くことを許された一輪の花…」
ピンクのフリフリドレスを着た私に、ウィズは賞賛の声。イメールのポエムはよく分からない…。
でもかわいいだなんて、もとのメリディの精神年齢は知らないけど、私は…。
そして、次のやつ。
「こ、これは…」
黒いレースのワンピーススカートから覗く、白いフリルの膝上丈のスカート。これってドレスというよりゴスロリというやつ…?
「い、イメールさん…こんな文化をどこで取り入れたの…」
「これは百年ほど前にオプテイシアで発祥したと言われており、大商人の娘から伯爵令嬢くらいまでに広く受け入れられている、根強いデザインです」
「そ、そうなんだ…」
「メリディ様くらいの年齢である、十歳…から十二、三、四…いえ十七歳くらいまでの、かわいらしい令嬢を着飾るのに…」
「私の人間年齢を無理に入れなくていいよ…」
百年前の日本にこんな文化はないよね…知らんけど。じゃあ、本家?ゴシックってどこの文化?ヨーロッパ?そんな趣味はないから、とにかくしらないよ!
でも…
「気に入られましたか?」
「えっ?あ?えーっとぉ…こんなの…しゅ、趣味じゃないんだからね!」
「メリディ様…素晴らしいツンデレです…」
「えっ…今なんと…」
「ツンデレです。意図に反した行動を照れながら取るさま、でしたでしょうか…。これも百年くらい前に作られた言葉だとか」
「私、照れてなんか…」
「なかなか良いと思いませんか?スカートの丈は長すぎないので動きやすいし、着やすいので、メリディ様の普段着か、町に出るときに、と思って。…だって、メリディ様ったら、マジ地味でババ臭いのばかり…」
「ちょっと、マジとか…」
「はっ、失礼しました。子爵家のメイド…いえ王女殿下の侍女ともあろうものが、町娘の使うような日本語を使ってしまいました…」
「それが町娘の日本語なんだ…」
「かく言うメリディ様も、最初の頃とは打って変わって、今は町娘のような日本語の口調になってらっしゃいますね」
「昔は日の本語って言ってたんだっけ?」
「はい。今でも、オプテイシアの周辺国では、日の本語を使っているそうですが、あまり日本語と変わらないそうですよ。あ、メリディ様は今まで、インテラスにいらしたんですっけ?」
「そう。あまり日本語と違和感はなかった」
「さようですか。しかし、新しい名詞は、オプテイシアで作られて、他国に広まっているそうです」
「へー…」
それにしてもこれ、結構良いかも…。
よし、これで私の着られる服がたくさん増えた。
まず、孤児院からずっと着てる、お忍びドレス。これも胸を調整してもらった。ほつれとかも直してもらった。最初に着た思い出のドレスと言ってもいい。まだまだ捨てられない。
それから、今回作ったお忍び用三着と、室内の普段着用三着。
あと、メリディが持ってたドレスで、比較的落ち着いたヤツ十着。胸を調整してもらった。
全部で十七着。サイズの合わないTシャツ着てたのが信じられない。
あとは…着もしない、メリディのドレスが三十着くらい…。売る機会があったらいいな。




