107 脱出計画足踏み状態
「分かったよ。じゃあ行こうか」
「ええっ?いきなりですね…。イメールは覚悟してたのかもしれませんが、申し訳ございません。私には準備する時間をいただけませんか?」
「ああ、ごめん。いいよ」
「あの…私が注文つけたドレスが来るまでは…」
「えっ…そんなに着せたいなんて、いったいどんなの注文したのさ…。もう女王様はいらないよ」
「ぴ、ピンクでフリフリの…」
「それ、処分したやつ…」
「メリディ様は女王の威厳を示すようなドレスが一番ですが、かわいらしいのも大変お似合いにな…」
「私、記憶はないんだけど、たぶん五三歳だし、最近出産もしたんだけど…」
「し、しかし、見た目は十さ…十七歳のピチピチのお姫様でしょう!」
「ピチピチ…。あぁ、もうわかったよ…。もう一着は?」
「黒を基調として、フリルをたくさんあしらった、膝上丈のスカートが、十さ…十七歳の魅力を存分に引きだ…」
「わかったよ…ドレスが来るまで待つよ…」
「ありがとうございます!」
「ねえ、ウィズ、お願いが」
「メリディ様は、ここに来たばかりのときと口調が変わりましたね」
「ああ、私は記憶がなくなって目覚めたときから、ずっとこんな感じだよ。ここでは貴族の前だから猫かぶってただけだよ。あなたたちがあまりにもイライラさせるから、地が出てきちゃったよ」
「も、申し訳ございませんでした…」
「それでお願いなんだけど、ちょっとこっちに来て」
ストレージの中の馬車の車庫にご案内。
「これも…ここも、ストレージですか?」
「そうだよ。この馬車を引ける馬を、フォーサスさんにばれないように、手配できないかな」
「ばれないようにですか。イメールがドレスを手配したとき、フォーサス様はいち早く察知されて、注文を加えていたようなんです。あの女王陛下のドレスは、イメールだけの考えではないんです」
「なるほど…じゃあ、子爵家の馬をいただこう。四頭くらい必要だよね。代わりに一頭につき、大金貨一枚置いていけばいいよね」
「申し訳ございません…。相場は分かりません…」
「まあ、適当でいいや」
「あの、メリディ様は、ドレスのチョイスからして、目立ちたくないんですよね?」
「うん」
「この馬車は装飾が少ない方ですが、四頭立ての馬車など、王家か公爵家にしかないと思います…」
「えっ…。じゃあ、馬はキャンセルかな…。やっぱり、私はこの世界の常識が足りないなあ」
「それは、忘れてしまった記憶の中には、常識なども含まれるということですか?」
「うん、まあそんなところ。だから、二人が来てくれて助かるよ」
「光栄です」




